サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会も大詰めを迎えている。日本は悲願の1次予選を突破したものの、初戦で姿を消し、残念な結果となった。ところで、試合を見て気になったのは腕や足などにタトゥー(入れ墨)を入れた外国人選手の多いことだ。
サッカーファンでなくても名前ぐらいは知っているアルゼンチン代表のメッシ。彼もタトゥーを入れている。母親の顔や子どもの名前、故郷のロサリオの地図などが描かれているという。
サッカー少年の憧れの存在であり、その影響力は計り知れない。メッシのようなタトゥーを入れたいと考える少年がいてもおかしくはない。「考えすぎだ」と言われればそれまでだが、少々心配でもある。
日本人の多くは伝統的にタトゥーに対してあまりいい印象を持っていない。ところが世界をみるとタトゥーは普通に体の装飾になっている。
来年はラグビーW杯日本大会、20年は東京五輪・パラリンピックが開かれ、タトゥーの入った外国人旅行者も多く訪れるだろう。その時、旅館はどうするのだろうか。
ある経営者は「旅館は浴場を共同で使用する。タトゥーをしていればどうしても目立ち、苦情の原因になりかねない。ファッションとしてのタトゥーを拒むのはどうかと思うが、他のお客さまのことを考えると…」と二の足を踏む。もちろん、タトゥーに理解を示し、入浴を拒まないところもある。
「タトゥースポット」という口コミサイトには、タトゥーをしている人でも入場可能な施設を紹介。うち、温泉は234件が掲載されている。
公衆浴場法で入浴を拒否できるのは感染症を患っている人に対してだけ。旅館業法も宿泊拒否は賭博などの迷惑行為や風紀を乱す行為をする恐れがある場合に限られる。「入れ墨の方の入浴はお断り」という注意書きを掲げる旅館は少なくないが、あくまでも個別の判断とされている。
観光庁は16年3月、タトゥーがある外国人旅行者の入浴に関する留意点や対応事例を示した。
(1)シールなどで入れ墨部分を覆い、他の入浴者から見えないようにする(2)家族連れの入浴が少ない時間帯への入浴を促す(3)複数の風呂がある場合、浴場を仕分けて案内する(4)貸し切り風呂の利用を案内する―などの工夫を推奨。
一方で、宗教や文化、ファッションなどさまざまな理由で入れ墨をしていることに理解を求めている。
観光先進国を標榜するわが国にとってタトゥー問題は避けては通れず、国は明確な指針を示す時に来ているのではないか。