紀州鉄道は和歌山県の御坊―西御坊の2.7キロを結ぶローカル私鉄です。「日本一短い私鉄」として知られていますが、近年は利用者の減少などで厳しい経営状況が続いています。運営会社が鉄道事業を手放す意向を示していることから、あり方の議論も起こり始めていると聞きます。
4月上旬の平日に訪れてみました。JR紀勢線の特急「くろしお」で御坊駅に降り立ち、案内に沿って進むと、短い切り欠きホームに着きます。ここが紀州鉄道乗り場です。
待っていると、赤色とクリーム色のツートンカラーのディーゼルカーが入線してきました。信楽高原鉄道で使われていた車両を譲受し、和歌山らしい明るいイメージに塗り替えて使用しています。
車内はロングシート。数人を乗せて出発すると、御坊市街地をゆっくりと進んでいきます。最初の学門駅で1人が下車。次の紀伊御坊駅で1名が下車し、4名が乗車。短い路線なのに、意外と乗り降りがあります。終点の西御坊駅で降りたのは筆者を含めて6名で、平日のローカル線としては、意外と多い、という印象です。
かつては、西御坊駅から700メートルほど先にある日高川駅まで運行していましたが、1989年に廃止されています。四半世紀が経過していますが、まだレールが残っていて、時が止まったかのようです。
歩いて、車庫や本社のある紀伊御坊駅を訪ねました。高度成長期の雰囲気を漂わせる立派な駅舎で、有人窓口もあり、いまでは珍しくなった硬券も販売中。応援も兼ねて、余分に買ってしまいました。ただ、紀伊御坊駅から御坊までは150円。余分に買っても、貢献は知れています。
地元の御坊市では、地域公共交通活性化再生協議会で、紀州鉄道について話し合う専門部会を設置して協議しています。紀州鉄道は、鉄道事業の譲渡先を探している状況で、当面はその交渉の進展を見守るほかなさそう。ミニ鉄道の未来は定かではありません。
交通機関として考えた場合、絶対的に必要な路線とまではいえませんし、事業譲渡がうまくいかなければ、廃止もあり得ます。
とはいえ、紀州鉄道は日本一短いローカル私鉄として知られていて、観光的なシンボルという価値があります。御坊市もその価値は認識しており、事業譲渡が決まり、地元が支援しつつ存続することを期待したいところです。
(旅行総合研究所タビリス代表)




