【観国之光 216】民泊新法施行、自館の強みに磨きを 本社論説委員 内井高弘


民泊に厳しい目を向ける京都市。門川市長は15日、違法民泊への対応を担う職員を激励した

 住宅宿泊事業法(民泊新法)が15日施行され、一般住宅に旅行者を泊める「民泊」が本格解禁された。旅館・ホテルなど既存の宿泊業者にどんな影響を与えるのか、どう宿泊の流れが変わるのか、今後の動きを注視したい。

 手続きの煩雑さや自治体の上乗せ規制もあって、自治体への営業届け出は低調に推移している。「過剰な規制はビジネスチャンスの芽を摘みかねない」との指摘もあるが、民泊を巡っては当初からさまざまなトラブルが起きたことを考えると、厳しいぐらいのルールでスタートするのが妥当ではないか。

 民泊は欧州で先行し、観光客誘致策として期待された。が、住民とのトラブルや民泊ブームで住宅費が高騰するなどの悪影響が目立ち、利用制限や違法民泊の取り締まりなど、規制強化の動きが広がっているという。

 国民生活センターによると、民泊に関する相談件数は15年度で57件だったが、16年度214件、17年度271件と増加している。「宿泊料のほかに清掃料金を請求された」など料金に関する相談のほか、騒音やごみ処理など近隣住民トラブルに関するものが多いという。

 センターでは民泊利用の際には、予約仲介サイトなどで宿泊に必要な料金総額、キャンセル規定、鍵の受け渡し方法などを確認するよう消費者に注意を呼び掛ける。また、民泊を提供する側についても「簡単にもうかる、利益が得られるというセールストークには注意を」と促す。

 新法が厳格に運用されれば、こうした問題は解決されると考えがちだが、法の網をくぐり、違法まがいの民泊を行う者は必ず出てくる。

 民泊に対して厳しい目を向ける京都市。新法施行を受けて、門川大作市長は届け出の受理や違法民泊への対応を担う職員らを激励した。また、京都府警との間で連絡協議会を設け、違法民泊を根絶するための連携を強化する方針だ。

 民泊に大きな関心を示すのが旅館・ホテル業界だ。民泊は急増する外国人旅行者の受け皿となるが、外国人を取り込みたいのは旅館・ホテルも同じこと。心中穏やかではいられない。

 一方で、旅館と民泊はマーケットが違うとの見方もある。大手旅行業幹部は「民泊利用者が増えるからといって、旅館の利用者が減るかといえばそうはならない。むしろビジネスホテルが影響を受けるのではないか」と指摘する。

 いずれにしろ、宿泊業界は新たな段階を迎えることになる。旅館・ホテルが民泊の波に飲み込まれることはないだろうが、新法施行を機に、自館の強みに一層磨きをかけてほしいものだ。

民泊に厳しい目を向ける京都市。門川市長は15日、違法民泊への対応を担う職員を激励した
     

 
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