【観光立国・その夢と現実 4】第7代全旅連青年部長の誕生 小原健史

  • 2020年7月19日

 本コラムの4回目、今回は旅館業界と私の関連を青年部の段階から思い出しつつ記載する。

 当時の全旅連青年部長は山形県温海温泉萬國屋の本間幸男氏であって「料飲税撤廃」の運動を中心に青年部組織の強化に注力をしていた。本間体制の全国大会は東京で開催され、赤坂プリンスホテルのクリスタルホールで全国から数百名の青年部員を集め「料飲税撤廃」をスローガンに盛大に開催されていた。

 本間体制の後半は、次期青年部長が誰になるのか?が注目を浴びたが、私は九州ブロック長が終われば、地元の九州や佐賀県の観光振興や旅館業の繁栄に寄与するつもりでいた。

 個人的なことで恐縮ながら、私の父である小原嘉登次は、尋常高等小学校のみの学歴ながら、大阪の丁稚奉公や南洋フィリッピンのマニラ麻山で艱難(かんなん)辛苦の体験を糧に嬉野温泉で旅館・和多屋別荘を興し、佐賀県内に7軒の旅館ホテルや警備会社を展開し、さらに佐賀県議会議員11期44年、県議会議長26年の最長不倒記録を持つ男であって、誠に厳しい父親であった。

 父嘉登次は、私の全旅連青年部の活動を良しとせず1日も早く和多屋別荘の本業に専念すべく折に触れ命令を受けていた。

 そんなある日、同じブロック長である山形県の須藤清本氏から連絡があり「嬉野温泉に数名で行くから会ってくれ」とのこと。何のことかと思いつつ到着を待っていると、本間部長、太田前部長、そして須藤氏の3人が来館。早速本題に入った。本間氏は、彼独特の言い回しながら「次期部長を受けてほしい」とのこと。太田前部長からも推薦の言葉があり、そして、盟友清本氏も「けんちゃん、覚悟決めてくれ!」と。私は、父嘉登次から頻繁な上京や全国各地への出張の中止を迫られていたので、父の厳しい顔を思い浮かべつつ、目の前の3人の強い要請の言葉のはざまで大いに心が揺れた。そして、苦し紛れに出た言葉が「親父が反対するだろう」と。

 それを聞いた本間部長は「小原君、今回は君がYESと言うまでわれわれは帰らない覚悟で来た」という。そして「お父上に会わせてくれ」とも。本間、太田、須藤3氏の決心は固い、仕方なく翌日に3人と親父、そして佐賀県旅館組合青年部の主だったメンバー数名に和多屋別荘の会長室に集まってもらった。

 早速、本間部長から「私の後継者にご子息の小原健史君を考えています。ついては、お父さまのご了解をいただきたい」と。父は応え「息子の健史はそんな大それた人間ではありません。今でも出張が多く、数日前にも本業に専念しなさいと叱りつけたばかりです。お断りします」と。

 しかし、本間氏は諦めない。数回押し問答が続いたが、最終コーナーで本間氏いわく「お父さまは、ご自分の息子が日本の旅館業界のひのき舞台に飛び出すのを握りつぶすのですか!」と一喝するかのごとく言った。地元では長期にわたる県議会議長であり、佐賀県旅館業界のドンでもあった父に本間氏が遠慮会釈なく迫るので、私も地元の青年部員もハラハラドキドキしていたが、その本間部長が迫る言葉を吐いた後、父小原嘉登次はしばし沈黙し、ポケットから白いハンカチを出し、そして、目頭を拭った。その場の全員があぜんとする中、父が言った。「本間さん、そこまで健史のことを言っていただきありがとう。全てあなたにお任せします」。そして私に振り向き言った。「健史、ここまで言われて男として断れんぞ。やるなら一所懸命、皆さんのために頑張れ」と。

 この瞬間、第7代全旅連青年部長が決まった。

 (佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター会長)
     

 
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