【観光業界人インタビュー・DMO成功への秘訣 26】四国の右下観光局・事務局長 竹内靖氏に聞く

  • 2018年10月19日

竹内事務局長

名より実を取れる組織に 旅行業取得し販売網整備

 ――DMO立ち上げの背景は。

 「四国の右下観光局は、日本版DMOとして徳島県南部にある、阿南市、那賀町、牟岐町、美波町、海陽町の5市町で構成する組織『四国の右下・魅力倍増推進会議』から発展する形で設立。以前は、主に行政主体で、観光、産業振興の担当者が、自然を生かした観光モニターツアーを実施するなど、交流人口の拡大や移住者の増加を目指し取り組んでいた。観光庁がDMOを提唱したことをきっかけに『民間目線の観光』をキーワードにした地域振興への機運が高まった。組織は、自然、阿波人形浄瑠璃など伝統文化、伊勢エビやアワビなど豊富な食材、お遍路へのお接待など魅力ある観光素材を生かし、エリア全体の広域的マネジメントや観光産業の成長を図ることを目的に今年3月に設立、4月から活動を開始した」

 ――現在の取り組みは。

 「まず、情報発信の整理や宣伝の集約化に着手している。以前のホームページは、情報量は多いが見た目がごちゃ混ぜ状態で分かりにくく、地域における情報発信のプラットフォームの役割を果たせていなかった。賞味期限の切れた情報の削除や訴求ポイントの明確化など整理を行い、9月に『四国の右下』と命名したホームページを立ち上げた。観光名所や体験情報のほか、モデルコース、イベント情報などを掲載し、観光客の目的や行動を想定したものを盛り込んでいる。宿泊予約につなげるため、旅行会社へのリンクや料金の比較ができるようにもした。自治体主体の事業だと公平目線から情報が均一化になりがちになる。民間目線を取り入れ、お客さまの趣向や行動を分析した上で、欲しい情報を強弱つけながら発信していく。DMOが地域を紹介するからには、地域観光の入り口の役割を担わなければならない。県や地域の方々のご意見やお力を借りながら情報を集約し、より良い発信スキームを作り上げていく」

 ――組織の目標は。

 「名より実を取れる組織とする。今年度の目標数値は、宿泊者数が8千人泊、観光流通額を2億円に設定。観光コンテンツの開発、磨き上げはもちろん、スムーズな旅行の実現のため、観光局が情報のハブとなるための仕組づくりに取り組んでいる。拡大するインバウンドの獲得も命題。現在は、県内でも割合が高い台湾をターゲットにしている。現地コーディネーター契約を進め、募集ツアーの誘客を増やしていく。また今年12月から来年3月までは徳島と香港を結ぶ直行便が就航する。香港の人はFITが相対的に多い。11月には現地の旅行博に参加し、レンタカーを活用した観光プランをPRするなどして誘客への仕掛けを行う予定だ。発信だけでなく、稼ぐ仕組みも必要。現在準備段階だが、旅行業2種を取得し、観光案内とともに旅行商品の販売をBtoCで行えるようにする。情報発信とコンテンツの販売を一元化し、効率化を行うとともにお客さまの利便性を高める。また、ウェブ販売では必須となるオンラインカード決済やコンビニ決済なども取り入れ、スムーズに観光が楽しめる環境整備も進めていく」

 ――他地域との連携は。

 「北のイーストとくしま観光推進機構、西のそらの郷、さらに南の高知県東部観光協議会の三つの隣接するDMOとの連携を進めている。2020年には、阿佐海岸鉄道によって海陽町・阿波海南駅から高知県東洋町・甲浦駅の区間で、線路と道路を両方走る車両『デュアル・モード・ビーグル』(DMV)が日本で初めて運行される。日本初の乗り物がエリアに来ることは大きなチャンスだ。また、徳島阿波おどり空港よりも高知龍馬空港が近いエリアもある。大阪から来られたお客さまが徳島で宿泊し、高知に抜けて飛行機で大阪に戻る観光ルートも考えられる。地域や県の壁にとらわれず、隣接地域とともに企画立案や情報発信を行い周遊観光ルートの提案も進めていく」

 ――課題は。

 「地域の認知度の低さだ。徳島、四国は全国的に見て認知度が低い。まずは知ってもらうため、地域で特徴ある祭りや旬の食材などを打ち出している。また、初めての人にも訪れやすいように複数のモデルケースも用意し訴求している。観光地一つ一つの距離が離れ、かつ移動時の楽しみが少ないことも課題だ。地域を結ぶJR牟岐線の阿波室戸シーサイドラインでは、車窓から肝心な『海』はあまり見えない。最近ブームの観光列車を参考に、工夫が必要だ。地域では人材、財源は限られる。地域全体で知恵を出しながら作り上げていく」

 ――今後の取り組みは。

 「マーケティングのためのデータ収集と分析、中小の宿泊事業者との手配ルートの確立だ。これまでは、年間宿泊者数や消費額などを正確に把握できておらず、KPIを設定する材料がなかった。現在は、お遍路、日帰り、宿泊、外国人旅行客などの現状把握を地域の事業者から協力をもらい、データ収集、蓄積をしている。お客さまの行動履歴のデータなどがあれば、次の対策も打ちやすくなる。中小の宿泊施設の販売網の確立も必須。地域には大きな宿泊施設は三つしかない。全体でみても30軒ぐらいだ。私は旅行会社出身で、旅行会社目線で見ると、団体や募集ツアーの商品は作りづらく、必然的にFITが中心となる。個人客は、トリップアドバイザーなど口コミを頼りに宿泊予約する傾向にあるが、数多くの民宿は、ウェブ販売対応、外国人旅行者対応が十分にできない状況にある。従来の旅行会社の販売網から漏れるようなお宿も観光局がお客さまのニーズに合わせて手配、販売含めて対応できるようにしていく。また、宿泊、観光施設は季節によりオンオフの波があるが、季節を問わないコンテンツの発信により『需要の平準化』にも寄与していきたい。今後、劇的な環境変化が生まれるわけもなく、期待もしていない。初めてだけどいつか訪れたような懐かしい気分になる田舎の風景など手つかずのものは残しながら、それを分かりやすく、身近に感じていただくためにはどうしたら良いかを追求していく。地域の人たちと新しいコンテンツも生み出しながら、将来的には、『観光局ができたのに大して何も変わらなかったよね』ではなく、『観光局ができて観光バスが、レンタカーが、お客さまが増えたよね』と実感してもらえるようにしたい」

たけうち・やすし=大手旅行会社やリゾート開発会社などを経て、18年4月から現職。

【長木利通】

 

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