【観光業界人インタビュー・DMO成功への秘訣 15】ANA総合研究所会長/ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構専務理事 小川正人氏に聞く

  • 2018年4月30日

ANA総合研究所会長/ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構専務理事 小川正人氏

温泉と食、ウォークを融合 イベントで地域を活性化

 ──ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構の立ち上げ経緯は。

 「ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構は、2016年9月にツーリズム・エキスポ・ジャパンで設立を発表した。16年に、環境省から温泉地への誘客数やインバウンドをどう伸ばしたらよいかという話があり、ガストロノミーツーリズムを国民保養温泉地の一種のイノベーションの案として提案。温泉サミットで当時の森本英香環境省大臣官房長と話し、社団法人を作ったらどうかという話となり、ANA総合研究所とぐるなびが設立時会員企業となって立ち上げた。『温泉』でなく『ONSEN』としたのは、日本国内だけでなく海外からの訪日観光客にも温泉の魅力を広く発信したい思いがあるから。『SUSHI』『NINJA』などと同じように国際語になってほしい。ガストロノミーウォーキングは、フランスのアルザス地域圏が発祥。私が日本観光振興協会で国内旅行委員長を務めていたときにウォーキングとガストロノミーを一緒にしたイベントが欧米で盛んに行われていることを知った。アルザスではグルメウォークとして、6〜9月の毎週日曜日に行っている。ワイン畑の絶景の中でフルコースを食べることは素晴らしい経験。それを日本のONSENと組み合わせた新しい体験がONSEN・ガストロノミーウォーキングだ」

 ──日本での実施場所が増えているが。

 「最初に、温泉と食、ウォーキングを組み合わせたイベントについて別府市の長野恭紘市長に話すと意気投合し、11月にキックオフイベントとして開催していただき、若い人から70歳ぐらいの人、外国人も参加した。ほかにも発表後すぐに、7自治体が名乗りを上げ、企業も大和リース、サントリーやプリンスホテルなども手を挙げた。それぞれの開催地で実行委員会を作り運営する形を取っている。地元の中でIターンやUターンの若者なども参加して地域の魅力について熱い議論が行われるし、各地で手応えをつかんでいる。17年度は16カ所で開催した。18年度は25〜30カ所の開催を見込んでいる」

 ──イベントの内容は。

 「約5〜10キロの距離のウォーキングルートに、ガストロノミーポイントを7〜8カ所設置。その地域ならではの食や自然、景観や体験を楽しみながら歩き、癒やされる。温泉と食の組み合わせは、断トツの差別化。ほかに会員となった読売新聞やセブン・イレブンなどもそうだが、関わる全員が地域活性化など地域に貢献したい思いがある」

 ──開催費用は。

 「開催費用はおおよそ150万円前後。参加費(1人3〜4千円で200〜300人参加)と地元企業の協賛で成り立っている。出費は、食材が多くを占めるが、地元に金が落ちる仕組み。観光客のリピーター化につながる手頃に始められるイベントだ」

 ──組織の目標は。

 「賛同いただける会員企業を増やし、また個人会員を募集して機構の活動を継続していく。ONSEN・ガストロノミーツーリズムを応援する個人会員組織『ONSEN騎士団』の募集を4月から開始し、3万人規模のサポーター集団を作り上げたい。ONSEN騎士団向けに、環境省が指定している国民保養温泉地を中心にめぐる『ONSENパスポート』を作るなど、楽しく温泉地の活性化を進めていきたい」

 ──地域の観光課題は。

 「日本の場合、東京、京都、大阪の黄金ルートはともかく、地方にまでインバウンドなどがまだまだ行き渡っていない。観光と食は、行政でも部署が異なり複雑化する。アルザスでは横断的にして活動を推進し、年間1800万人を集客する。もっと集客への可能性を高めるためにも横断的に取り組んでほしい。また、日本では酒蔵ツーリズムなどあるが、売り上げの6割がワイナリーに買いに来る人や問屋など。逆にそこが狙いどころ。イベントでは、地元で食材が売れて、地元で小売りができる。地方から首都圏への商流とは違う流れができる。参加施設は、大型の旅館・ホテルもあれば、小さな旅館・ホテルもある。おしゃれなイベントであるし、若い人から年配者まで全員が楽しめるのでぜひ実施してほしい」

 ──実施する中で感じたことは。

 「コースの中でヨーロッパの場合はこれでもかと食を提供するが、日本の場合は健康作りが目的の修行的なウォーキングに慣れているせいか、食が少ない。そこは地域の魅力ある食を増やしていきたい。ガストロノミーツーリズムは欧米では常識である。ウォーキング以上に食を楽しんでもらえるようにしたい」

 ──SNSの活用は。

 「現在は、フェイスブックなどSNSやホームページ、市の広報による募集で、毎回200〜400人集まるようになった。以前は新聞や旅行会社で観光は集めていたが、今は旅行会社でなく地域が集める時代になった。良いコンテンツがあるところに人が集まっている。そしてSNSで『いいね!』を集めないといけない。このイベントでは天気だと95%、雨でも80%の満足度の評価をもらっている」

 ──今後の展開は。

 「将来的には全国50〜100カ所で、毎週の土日にどこかでイベントを開催しているようにすること。参加者は、毎回約500人が参加し、事業が成り立つようにしたい。イベントは、地元に金が落ちるし、地域貢献を模索する中でのエージェントフリーの素材として活用できる。広域型のDMOでもぜひ最新型の地域活性化イベントに取り組んでほしい」


大館廃線ウォーキングの様子

【おがわ・まさと】
1978年慶大経済学部卒。同年全日本空輸入社。東京支店法人営業部長、広報室長、ビジネスサポート推進部長などを歴任。2009年執行役員営業本部副本部長、11年上席執行役員名古屋支店長を経て、15年4月から現職。

【聞き手・長木利通】

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