【観光業界人インタビュー・DMO成功への秘訣 14】東武トップツアーズ 執行役員人事総務部能力開発室長 山田 徹氏に聞く


東武トップツアーズ執行役員人事総務部能力開発室長 山田 徹氏

推進役になる「人」が必用 東武鉄道利用し商品提供

──東武トップツアーズのDMOへの取り組みのきっかけは。

 「会社として、地域活性化のために貢献しようと、DMOの支援を始めた。地域創生事業は、東武トラベルとトップツアーが合併し、2015年に新会社を立ち上げた時から会社の柱として力を入れている」

──DMOへの取り組みは。

 「事業企画部と経営戦略部が専門で推進する部隊を設けるほか、国内旅行部と各地域センターが連携し、北海道から沖縄までの着地型の商品造成を行い支援している。東武鉄道沿線を強化地域と位置付け、特に日光地区では組織の中にまで入り込み、ゼロから進めている。DMOは地域により求めるものが異なり、まったく旅行と関係ない組織もあるなど千差万別。旅行会社としてどう絡み、貢献できるかが重要だ。東武沿線地域の活性化については、事業企画部が主体となり、東武グループを活用した地域内の目的地作りなどの課題解決支援を行っている。経営戦略部は、全社的な方向性の策定や全体を統轄して必要な指示を出している」

──DMOが成り立つには。

 「まず『人』が必要。DMOの推進役になる人がどれだけいるか。地域のために頑張るキーマンを見つけることが一番のポイントだ。しかし、専任の人材を見つけることは難しい。自治体などが公募で募集するが、年次での措置でしかなく、現状では観光業界経験者で定年になった人が多くを担っている。これからは、マーケティングの知識を持ち、地域活性に長く携わる若い人材が必要と考えている。また、DMOを運営する上では、地域ごとに予算や人、役割がそれぞれ違い、各地域での成功例を見つけなければならない。自治体や民間が単独で行っていても限界がある。ノウハウで足りない部分は、外部と連携しながら進めるべきだ。そして、関わる人の気持ちや熱意も必要となる」

──多くのDMOが、財源を課題に挙げるが。

 「地域により必要な予算は異なる。継続するには、人や組織を動かすための財源がいる。DMOが自走するにしても、何をもって自走なのかも決めなければならない。例えば、DMOが将来的に稼げるDMCに変わるなど、将来的に財源や稼ぐことに対しての目標は明確にして進めるべきだ」

──日光地区を進めているが。

 「支援しているDMO日光は、シンクタンクとして地域のマネジメントを担っている。DMOは、現在は稼ぐ事業を行わず、観光協会や民間、行政に対して戦略を立て、地域のブランド力を上げて稼げる日光を作るための提言をしている。また、地域調整しながら調査なども実施している。現状、DMOのみでは専門的なブランディングやプロモーションまですべてはできない。内部、外部からの力を連携させながら地域の活性化を推進していく」

──DMOにおける目標設定は。

 「国の施策としてDMOのKPIは、旅行消費額を増やすこと、宿泊人員を増やすこと、満足度を高めること、リピート率を高めることの四つだ。とにかく観光客に地域で消費してもらうこと。売り上げのゴールはなく、右肩上がりの増加を目指す必要がある。その中で、DMOの役割は何かを考えて実行しなければならない。DMO日光で言えば、日光全体の観光収入を増やし、税収を上げて人を増やすことを考えており、東武トップツアーズでは、どう支援し寄与できるかを考えている」

──東武トップツアーズの強みは。

 「東武鉄道というインフラがあり、東武グループと連携した地域支援は他社にはできない強みだ。東武鉄道を利用し、地域の特性を生かした旅行商品を提供する東武旅倶楽部による実送客などを行っている。沿線ならではの商品として、川越や栃木市、会津地域など他社ではできない細かな商品作りも行っている。外国人の誘致の調査なども、東武グループのリソースを使いながらモニターツアーやFAMトリップも実施している。団体旅行も強みであり、教育旅行の団体を増やすために、団体の受け入れ先の開発として、農泊の受け入れ先なども地域と共に進めている。一方で、ウェブでの集客やメディアでの発信などに改善の余地がある。東武鉄道から離れた地方なども認知度として不足している。足りない部分に関しては、外部とも情報連携や販売連携を行いながら協力して進めていく。特に、インバウンドに関しては日本全体が協力し合い、オールジャパンで取り組まなければいけないと感じている」

──地域に対して求めることは。

 「DMO日光では、欧米人観光客を増やすことを目標にしている。まずは、目標を持ち、目標に沿って地域全体が同じ方向に向くことが大切だ。DMOでは、旅行会社が前面に出る必要はない。主役は地域の方々であり、旅行会社が何をやるかを模索していくものだ。事業として使った金に対するKPIの検証なども行わなければならない。観光施策は、1年など単発でやるものでない。都市部でもう客がいるところとまだ客が少ないゼロベースの地域によって、人の関わり方や考え方、課題は違うだろう。コンセプトを地域全体で立て、持続できる観光施策をどう作るかを考え、整理しながら取り組むことが必要だ」

──東武トップツアーズの今後の取り組みは。

 「営業推進部で戦略構築や勉強会を行い、どう自治体と連携を進めていけるかなど考案している。DMOは全国に100カ所以上あり、さまざまな課題がある。一律で戦略を出すのは難しい。一つ一つの課題に全員が対応できるようにする。また、異業種や旅行会社との業務提携も推進し、地域のイベントや今以上に誘客ができるようにしていく。旅行会社ならではのサービスを提供し、地域とウィンウィンの関係を作っていきたい」

【やまだ・とおる】
1986年に旧東急観光入社。教育旅行営業を中心に担当し、2015年新会社発足時に教育営業部、2017年に経営戦略部部長を務める。2018年4月から現職。

【聞き手・長木利通】

 

 
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