【観光業界人インタビュー】東武トラベル社長 森岡賢氏


東武トラベル社長 森岡賢氏

国内旅行の販売方針

スカイツリー入場客を 協定機関の地域に送る

──経営状況はどうか。

 「旅行業は不況抵抗力が強い業界ではないので、風が吹けばしんどい。昨年は東日本大震災直後に宣伝広告費や賃借料など人件費以外の一般管理費の支出にストップをかけた。今年は何も制限していないが、上期6月までの一般管理費は昨年とほぼ同額で推移している。社員がお金を使わずにお金を稼ごうと意識している表れだ。収入は一昨年水準まで完全に戻っているから、収支状況は良い。東武トラベルは03年に新会社としてスタートしてから、財務体質がかなり筋肉質になったが、社員のマインドも筋肉質になった。各管理職を通じて、社員によくやってくれたとメッセージを送ったところだ」

──国内旅行販売で力を入れていくのは。

 「店頭販売では、フェイストゥフェイスでなければできないことをやっていく。宿泊や電車、料金だけの案内であればメディアやインターネットで十分だ。一方、ネットではその日が結婚記念日なのか、母の誕生日なのか、そういったお客さまの個々の物語に思いが至らない。例えば店頭で草津のJRプランを売る場合、話を聞きながら特急草津号のシートのどちら側がいいかというところまで案内する。草津号は吾妻川に沿って走っていて、一方の側は崖しか見えないが、反対側にアサインすればずっときれいな渓谷が見える」

 「新たな旅行需用を開拓しようと、提案型の企画に注力しているところだ。会津の大内宿は最寄り駅から非常に不便なので、バスなど二次交通をセットし、大内宿に限らず周辺の観光素材もくまなく散策してもらうプランを作った。東京スカイツリーをからめては、上った後に東京ドームに移動して、ブルペンなどバックヤードを探検してから巨人戦を観る、あるいは、中山競馬場に行き、競馬新聞の読み方を教わって競馬を楽しむといったプランを作っている。どちらも売り出すとほとんど完売。こういった提案型は人手も時間もかかるので、少しずつ販売を伸ばしていきたい」

──東京スカイツリーの人気を追い風としてどう販売に結び付けるのか。

 「東京スカイツリーに送客するだけならば、どの旅行会社でもできる。スカイツリーに来たお客さまをそのまま帰すのではなく、周辺の墨田地域や日光など東武鉄道の沿線エリアの魅力を紹介し、そこに行ってもらうのがミッションだ。一例が東武鉄道乗車券とスカイツリー入場券に、下町の各加盟店で使える金券や特典パスポートをセットにした日帰りプラン。下町を歩いて、その良さを感じてもらう商品だ」

 「我々は全国に700軒の協定旅館を持っている。スカイツリーのお客さまをその旅館にどのように送るかだが、これは足元から東京駅や上野駅、羽田空港へ東武バスが15分間隔でシャトルバスを出しているので、上野駅からJRで草津に行く、羽田から飛行機で札幌へ飛ぶといった移動を考えている。実際に東京スカイツリーと関東の温泉地を組み合わせた少し唐突なプランを作ってみたのだが、これが割に売れている」

──旅館、運輸、観光施設の3つの協定機関とはどう関係を築いていくか。

 「かつての送客数の関係性だけでは難しい時代。だから、相手が困っていることを察知し、互いに助け合っていきたい。鬼怒川や草津など協定機関が多いエリアは冬が枯れる。その時期を埋めるのは、旧正月に動くインバウンドだ。9月中旬に台湾で、現地の旅行会社50社ぐらいを招いて協定旅館連盟と共同で商談会を開いた。現地の対日感情もよく、参加者はかなりの手ごたえを感じていた。中国、韓国とは違って、台湾のインバウンド客は止まっていないから、みんなで協力して開拓したい。具体的なアクションプランは連盟業務推進委員会のインバウンド委員会が近々まとめる。それを協議しながら、できることを進めていく」

───これからの国内旅行市場を見通すと。

 「団塊世代のトップランナーが今年から65歳以上の高齢者になる。この人たちは、年金も退職金も満額もらえる。旅行への意欲は旺盛だ。ましてこの世代は日本で初めてロックを聴いてコーラを飲む高齢者で、アクティブだ。人口が減っているとはいえ、経済力と消費マインドを持った高齢者がこれから増えるなら、50年、100年のタームではいざ知らず、旅行市場がこれから先、劇的にシュリンクするとはあまり考えられない」

【もりおか・けん】

東武トラベル社長 森岡賢氏

 
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