日本旅行、新社長の経営方針
旅連は重要なパートナー 地域活性化へ積極提案
日本旅行の社長に6月30日付で前JR西日本取締役の堀坂明弘氏が就任した。堀坂新社長に会社の経営方針、協定旅連との関係を聞いた。
──現在の心境を。
「110年を超える老舗の経営を担うことになった。身が引き締まると同時に、30年ぶりに東京に出てきて老舗企業のかじ取りを行うことに高揚感を感じている。就任して約1カ月、役員や現場を預かる社員らと直接、さまざまな話をしたが、皆個々の能力が非常に高く、優れていると感じた。これらを組織としてどう生かすかだ。歴史ある会社ならではのいい遺伝子を持っているし、誠実で、物事に一生懸命取り組むという風土もある。これからが楽しみだ」
──会社の課題について。
「従来の旅行会社は手数料商売がメインだった。それはそれでベースとしながらも、一方で手数料に依存しない新しいビジネスモデルを考えなければならない」
「例えば各地で取り組みが加速化している地方創生への関与。今、『日本版DMO』が盛んに作られている。われわれは地域の活性化に向けた提案を積極的に進めていきたい」
「今中計で推進してきた、インバウンドやMICE、BTMへの取り組みは一定の成果が出ている。この分野は東京オリンピックに向けてさらに成長すると考えられ、より深度化した取り組みが必須だ」
「もう一つはネット化への対応だ。OTAの急成長などにも見られるように、ネットを通じた旅行予約はいまや大きな販売チャネルのひとつとなっている。当社における企画商品販売のネット比率も年々増加傾向にあり、店頭・提携販売との兼ね合いも考慮しながら施策を打ち出していく」
「さらに国内旅行ブランド『赤い風船』の磨き上げだ。去年は過去最高の970億円を売り上げ、今年は1千億円を目指している。競争力のあるブランドと認識しているが、さらに中身を磨いていかねばならない」
「今、考えているのは、アクティブシニアへの対応だ。今のシニアは十把一絡げにはできない。単に観光に行って温泉に入る、というだけでなく、知的好奇心を満たすとか、自分の興味を深掘りするという志向を持たれている方が非常に多い。しかし、われわれはまだ商品提供がしっかりできていないのが現状だ。『おとなび』というシニア向け会員組織を持つJR西日本をはじめとする、JR各社との連携を含めて、このシニア層に向けた提案力を強化したい」
──今年度で終了する中期経営計画の次の計画は。
「今、議論している真っ只中だ。今の中計策定時もそうだったが、今回も社員と一緒に作り上げるというプロセスを大事にしている。全社員にアンケートを取り、各分野を担当する社員たちと本音の対話もしている。年末までには発表できると思う」
「世界情勢や少子高齢化など、厳しい経営環境下にあるが、未開拓のビジネスチャンスは数多く潜んでいると考えている。われわれの能力をいかに最大限に発揮するかだ。一方で、異業種とのアライアンスやコラボレーションも必要に応じて積極的に行いたい」
「今の中計でも力を入れているインバウンドやBTM、MICE、そして地方創生への取り組みなどが柱になるだろう。いずれにしても、規模やシェアで1位を目指すというよりも、この分野はどこにも負けないというものを数多く作りあげたい」
──協定旅館ホテル連盟をはじめ、関係機関との関係は。
「皆さまそれぞれのエリアにおいて、観光はもちろん、さまざまな分野で活躍しておられる第一人者だ。われわれが地域における観光活性化、地方創生を提案する上で、重要なパートナーだと思っている。コミュニケーションをさらに密にしたい」
「旅連では日旅連塾という、次代を担う経営者の勉強会を行っているが、私にとっても大事な事業だと認識している。皆さまとコミュニケーションをとれる貴重な時間であることはもちろん、そのような機会を通して私も皆さまとともに成長できるからだ」
「地域の魅力付けと誘客につながるような具体的な施策を考えて、実現できるよう、共に取り組んでまいりたい」
──プライベートの話。個人的に旅行に行くことは。
「忙しさにかまけて、今まであまり行けていなかった。ただ、これからは考えなければならない。シニア向け旅行を考えるきっかけになるだろうし、家内孝行もしなければならない(笑い)」
──出身は。
「熊本市の水前寺公園の近く。今回の地震で、親戚や高校時代の同級生が被災した。観光地は風評被害で大変だが、政府が予算を付けて、われわれも被災地を応援する取り組みをしている。熊本県の蒲島知事と先日お会いしたが、われわれに対する大きな期待感を感じた。復興の過程を見るという、今しかできないツアーも考えられる。積極的に支援したい」
【ほりさか・あきひろ】
1955年8月21日生。慶應義塾大学経済学部卒業後、国鉄入社。JR西日本で執行役員総務部長、取締役兼常務執行役員営業本部長などを歴任。2013年から日本旅行非常勤取締役も兼務。