【観光学へのナビゲーター 33】鎌倉市におけるオーバーツーリズム対策としてのICT導入の努力 日本国際観光学会オーバーツーリズム研究部会・江戸川大学教授 崎本武志

  • 2020年8月21日

崎本教授

 神奈川県鎌倉市はインバウンド観光客含め、日帰り客を中心に人気の高いエリアとして知られる。狭隘な地形の中に人気の高い観光スポットが集中し、交通ルートも限られていることから、オーバーツーリズムの問題が深刻化している。2019(令和元)年のGWには、江ノ島電鉄(江ノ電)の乗車に1時間以上を要することが話題となった。また、海岸沿いの国道134号線では慢性的な渋滞が長年にわたり市民生活に深刻な影響を与えている。

 鎌倉市が掲げるオーバーツーリズムの具体的な対策は、エリア分散化、公共交通へモード転換を促すソフト施策、マイカー利用の総量規制、海岸エリアへの利用・滞在の誘導、時期・時間の分散化、歩く観光や体験・交流の観光促進による車の移動時間縮小、の6点である。

 鎌倉市ではICTなどの活用により、行政のデジタル化、社会・地域のスマート化、共生社会の実現を目指し「パブリテック」を促進している。「パブリテック」とは、公共(パブリック)と技術(テクノロジー)を掛け合わせた造語であり、AIなどの先端技術を用いて社会課題の解決を図ることを指している。その一環として鎌倉市は、オーバーツーリズム解消に向け、ICTを活用して観光客の行動分析を可視化し、動態情報を取得する調査を実施することを目指し、㈱昭文社・㈱デジタルガレージ・㈱unerryの3社と協定を締結した。

 これらの調査結果に基づき、2020(令和2)年1月にはロードプライシング(課金による自動車交通量の抑制策)の導入に向けて国土交通省に要望書を提出するなどの動きを見せている。また、公共交通でも大船から鎌倉市北部を通って湘南江の島に至る湘南モノレールでは、尾渡英生社長を中心に本数の増発や湘南江の島駅の改修など積極的な誘客策を図り、観光客の迂回に成果を挙げている。しかし、JR鎌倉駅から小町通りへのルートと鎌倉大仏のある長谷寺へのルート、そして聖地巡礼スポットとして近年脚光を浴びている鎌倉高校駅前踏切といった、特に観光客が密集する地域では効力を発揮しているとは言い難い。

 鎌倉において持続可能な観光を実現するたには、鎌倉の観光における「空白」に向けて、いかに観光客を誘導するかが課題となる。例えば、観光客の混雑具合や主要観光地の入場待ち時間がなど表示されている「観光客分布表示板」がJR鎌倉駅前など主要地域に設置されることにより、観光客を分散させ回遊を促すことが可能であると考えられる。新たな観光スポットや閑散としているスポットに誘客するためのPR活動とともに、ICTの効果的な活用によって観光客分布の可視化を図り、オーバーツーリズム問題が解決されることを期待したい。


崎本教授

 
 
 
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