【観光学へのナビゲーター 24】宿泊施設での正しい入浴の仕方 日本温泉地域学会幹事・日本温泉協会講師 高橋祐次

  • 2020年6月14日

高橋氏

 旅行の楽しみの一つには、宿泊施設での温泉入浴や食事が挙げられます。特に入浴に関しては、ちょっとしたたことで、折角の旅行も台無しになってしまうこともあります。特に高齢者に多い入浴時の事故は、治療に時間がかかったり、後遺症が残ったり、最悪の場合は死に至る場合があり十分注意したいものです。東京消防庁のホームページでは、平成30年中の高齢者(65歳以上)の「おぼれる事故」で575人が救急搬送されており、そのほとんどが「浴槽」で発生しています。特に日常の生活空間と浴室の温度差が激しい冬場(12月~2月)の3カ月間で302人(52.5%)が救急車のお世話になっているのが現状です。全国的なデータはないですが、入浴中や入浴が原因で亡くなる方は、一年間で約19,000人と推計されています。入浴事故死とよく比較されるのが交通事故死で、警察庁の資料によると、2019年(1~12月)の交通事故死は3,215人で、入浴事故死は交通事故死の約6倍になっています。

 入浴事故の三大原因は、「脳卒中」「脳梗塞」「心筋梗塞」で、発見が遅れて浴槽内で溺死してしまうケースが多く見受けられます。どうしても高齢者は血管が弱く固くなっていますので、身体が冷えた状態で、いきなり熱い浴槽に浸かることによる急激な血圧上昇で血管が破れたり、水分の不足により血管が詰まったりしてしまいます。そこで、入浴事故を未然に防ぐための基本的なルールを守ることが大事です。

 そこで、まず宿泊施設にチェックインしたら、

 ①お部屋に用意している「お菓子」「お茶」をいただいて、十分休憩(体を休める)してから入浴する。浴室の水飲み場では、入浴前後にコップ1~2杯の水分補給が必要です。入浴中の発汗作用で血液粘度が高まります。

 ②入浴前に足先・手先などから心臓から遠い順に十分な「かけ湯」をすること。「かけ湯」は、からだの汚れを落とすためだけでなく、身体を温泉の泉質や温度に慣らすためです。

 ③のぼせやすい人は「冷たいタオル」、頭の血管が収縮している冬場の露天風呂では「熱いタオル」を頭にのせる。浴槽に入るときや出る時は、急激な血圧の変化がないように、ゆっくりした動作を心掛けること。

 ④長湯はしないで、「分割湯」にする。入浴は、案外疲れやすいので、額が汗ばむ程度で十分で、「分割湯」のほうが湯冷めしにくいと言われています。

 その他に、「熱い浴槽」と「ぬるい浴槽」が設置されている場合は、「ぬるい浴槽」から入ること。特に冬場は、脱衣所から露天風呂に直行は厳禁、必ず内湯で身体を温めてから入るようにすること。そして、一番大事なことは、深酒してお風呂には絶対に入らないことです。

 入浴の仕方は、各自の「流儀」があると思います。高齢者になっても、なかなか自己流は抜けきらないでいます。若い方々も、入浴事故の少ない時から、正しい入浴の仕方を身に付けて、安全な入浴を心掛けたいものです。


高橋氏

 
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