人間、どこで何と出会うか分からないものだ。最近初めて、本当においしいと思えるビールと出会った。ビール派ではない筆者、「とりあえずビール」というニッポンのオジサマ方の慣習が、まったく理解できずにいた。食事の前に飲むと、炭酸の泡でお腹が膨れてしまい、目一杯食べられなくなる。じゃあ、炭酸水のようにダイエットになるかと言えば、糖質もプリン体もタップリだから、そうでもない。どうせカロリーのある醸造酒を飲むなら、やっぱワインでしょ、というワケで、最初からワインを飲むのが常である。
モチロン、ほぉ~っ、と思うようなビールを飲んだことはある。だがそれは得てしていわゆる「クラフトビール」なのだ。クラフトビールとは、大手ビールメーカーのビールと対比的に使われる言葉で、小規模な醸造会社が造るビールのこと。1994年に酒税法が改正され、ビールの最低製造数量基準が引き下げられたため、全国各地に小さなビール醸造会社が登場し、地ビールブームを巻き起こした。
この「地ビール」と「クラフトビール」は、日本では同義に使われている。地方色が濃い場合は「地ビール」と称し、モノづくり魂を強調したい場合、職人芸という意味の英語クラフトマンシップと通じる「クラフトビール」と称する気がする。とてもウマイのだが、残念ながらあまり流通していない。
さて、今回なぜ驚いたかと言うと、その美味なビールがフツーに売っている大手ビールメーカーのものだったから。しかも、2015年に発売されていたのにノーマークだった。そのビールとは、サントリーの「~ザ・プレミアム・モルツ~ マスターズドリーム」である。プレモルの上を行くビールだと聞いて飲んでみたところ、確かにムチャクチャうまかった。
余計な成分は入れず麦芽100%なのだが、この原料にもこだわり、チェコおよびその周辺でしか採れない、上質で希少な「ダイヤモンド麦芽」を使用しているという。
また、仕込み釜で麦芽を一気に煮出し、濃厚で芳しい麦汁を抽出する「デコクション製法」を三度も繰り返す、「トリプルデコクション製法」を採用。さらには「銅製循環型ケトル」を導入することで、より厚みのある味わいを引き出したのだそうだ。
ネーミングの由来は、「まだ世界のどこにもない、心が震えるほどにうまいビールをつくりたい」という醸造家の夢を表現したもの。
売れるビールではなく、自分たちが目指すビールを造りたいというのは、通常大手にはないクラフトビールチックな考え方だ。
麦を連想させる、やや濃い目の琥珀色の液体は、苦みの中にほんのり甘味もあって、飲み飽きない。食事中にずっと通して飲んでもOKなくらいだ。
いやはや、恐れ入りました。1967年に日本で初めて瓶入り生ビール「純生」を発売したサントリーならではの、ビールに賭ける意気込みと熱い思いが伝わって来る気がした。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。






