
米国ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、世界の新型コロナウイルス感染者が8月26日に累計で6億人を超え、死者は648万人となった。世界最多感染は米国で約9400万人、日本は約1800万人で10番目。日本では現在、感染流行「第7波」が継続しており、7月以降に国内感染最多が更新され続けている。
今夏のコロナ感染拡大に際して、岸田政権は従来のような外出自粛や営業自粛などを求めずに、日常生活や経済社会活動の継続が図れるように行動制限の緩和を推奨している。
その結果、京都市では7月に祇園祭のハイライト「山鉾巡行」が3年ぶりに催され、古都のにぎわいがよみがえった。8月には道都札幌で3年ぶりに北海道マラソンが開催され、過去最多の1万8千人が参加し、市民が声援を送った。
同じく北海道では「ライジングサン・ロックフェスティバル」が8月中旬に石狩湾新港で3年ぶりの開催になった。主催者は「密を避けるために観客数を例年の3分の2に抑えた」とのことだが、2日間で約5万人がロックを楽しんだ。
私は北海道博物館の館長を勤めている。北海道開拓記念館(1971年開館)と道立アイヌ民族文化研究センター(94年開所)を統合して、2015年4月に「北海道博物館(以下、道博)」が開設された。
30人の学芸・研究職員を擁する北海道を代表する道立博物館であるが、コロナ禍の深刻化・長期化で博物館運営は苦労の連続である。コロナ禍による緊急事態宣言やまん延防止対策が発令されるたびに臨時休館措置が講じられた。
全国の学校や幼稚園も長い休みになったことをきっかけにして、道博の女性学芸員が「おうちミュージアム」を提唱し、子どもたちがおうちで楽しく学べるプログラムの提供を行い、やがて全国の240の博物館園が参加する連携事業へと発展した。
しかし、道博では、20年に予定していた大規模な特別展「恐竜展2020」が中止になり、21年の特別展「あっちこっち湿地」も緊急事態宣言の発令に伴って、1週間だけの展示で臨時休館になった。ところが、今年7月23日から始まった特別展「世界の昆虫」は過去最多の国内感染が生じる中で展示が行われ、夏休み期間中には数多くの子ども連れファミリーが来館した。
地球は「昆虫の惑星」といわれ、100万種以上の昆虫が発見されている。また、日本は「世界一の昆虫コレクション保有国」といわれており、今回の特別展では国内の博物館、大学、個人が保有する約10万点の世界の昆虫標本を借用して展示に供している。これまでで最大規模の昆虫展と評されており、昆虫好きの方々でにぎわっている。
主催者としては感染拡大防止対策を幾重にも講じて、「来館者の安全と安心の確保」に努めている。検温、消毒、マスク着用、連絡先提出などをお願いすると共に、動線や換気に配慮し、厳しい入場制限を実施して密回避を図っている。大禍なく、会期(9月25日まで)を全うしたいと念じている。
(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)