【私の視点 観光羅針盤 198】フェアトレードタウンと観光 北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森秀三

  • 2019年7月1日

 6月に札幌市はフェアトレードタウンの認定を受けた。フェアトレード(FT=公正・公平な貿易)とは、発展途上国の生産者が自立した生活ができるように生産物を公正な価格で買い入れて販売すること。

 FTは1960年代の欧州で始まったが、現在では3万種類を超えるFT認定商品が世界中で販売されている。そのようなFTを町ぐるみで広めて、地域に根付かせる取り組みが「フェアトレードタウン」である。

 FTタウン運動は2000年に英国の人口5千人の小さな町ガースタングで始まったが、現在では世界中で2100以上のFTタウンが認定されている。日本では熊本市、名古屋市、神奈川県逗子市、浜松市、札幌市が認定されている。

 FTタウンの認定を受けるためには、市内のFT商品取扱店舗数(人口1万人当たり1店舗以上)や市議会の支持など六つの条件を満たす必要がある。FTは遠い国の人たちを支援する運動と考えられがちであるが、一方で日本人自らの消費活動を足元から見直し、持続可能なライフスタイルに変えていく運動でもあるといえる。

 フェアトレードは、生産者や労働者の生活を改善し、環境破壊や児童労働などを防ぎ、持続可能な生産と消費を目指す運動であり、国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)と多くの共通点を有している。SDGsは国連が30年の達成を目指して定めた17の目標と169のターゲットから成っている。併せて国連総会は17年を「持続可能な観光国際年(International Year of Sustainable Tourism for Development)」に指定した。

 国連はかつて1967年を「国際観光年(International Tourist Year)」に指定した。当時は東西冷戦を背景にしたベトナム戦争の激化期だったので、スローガンは「観光は平和へのパスポート(Tourism : Passport for Peace)」であった。その50年後に「持続可能な観光国際年」が実施されたが、日本では業界団体の間で話題になったが、一般市民はほとんど知らないままに国際年が終わったのは残念なことだった。

 日本政府はいま20年の東京オリ・パラをターゲットにして「インバウンド4千万人」の実現に血道を上げている。さらに「30年にインバウンド6千万人」という数値目標も掲げている。「観光の量」にこだわることも大切であるが、一方で「観光の質」こそが重要である。

 量へのこだわりはしばしば「質の低下」を招きがちである。「観光の量の増大」と「観光の質の向上」とのバランスをとるのは容易ではない。FTタウン認定によって地元市民のライフスタイルに良い変化の生じることを期待するとともに、量にこだわるインバウンド観光立国が「日本観光の質の向上」に貢献することを切に祈っている。

 (北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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