【私の視点 観光羅針盤 146】トライアスロンのポテンシャル 石森秀三


 5月中旬に「世界トライアスロン・パラトライアスロンシリーズ横浜大会」が開催された。横浜市は2009年に開港150周年記念事業として「世界トライアスロンシリーズ横浜大会」を開催し、東アジア唯一のトライアスロン世界大会開催地になった。17年にはパラトライアスロンが「世界パラトライアスロンシリーズ」となり、横浜はアジア唯一の開催地になった。

 今年の大会もこれまでと同様に山下公園をスタート・ゴールとするスイム、バイク、ランのコースで開催された。山下公園や赤レンガ倉庫、みなとみらい21地区など、横浜の観光名所を舞台にして繰り広げられる熱戦はいまや横浜の風物詩になっている。2日間の大会のうち、初日はプロ選手らの男女エリートが競い合い、2日目は一般選手の「エージグループ」に約1700人が出場し、競技を楽しんだ。

 トライアスロンは1970年代に米国で広がったスポーツで、現在の競技人口は世界で210万人と推定されている。日本は米国に次いで競技者が多く存在し、約38万人が競技に参加しているとのこと。

 日本トライアスロン連合のデータでは、競技者の平均年齢は約43歳で、仕事で成功を収めた経営者など経済的に余裕のある人が多いらしい。

 今年の世界大会は横浜の他に、アブダビ、バミューダ、リーズ、ハンブルグ、エドモントン、モントリオール、ゴールドコーストで開催されるが、日本からの参加者も多い。

 横浜市は世界大会開催目標として、世界への情報発信、障がい者スポーツの推進、スポーツツーリズムの推進(横浜経済の活性化)、地球環境への持続可能な取り組み(横浜港の水質環境の改善、豊かな海づくりへ向けた取り組み、横浜ブルーカーボン事業への参画、地球環境への負荷軽減への貢献)などを掲げている。

 欧米ではトライアスロンは収益性の高い事業とみなされており、投資の対象になっている。事実、一連のトライアスロン競技を主催していたワールドトライアスロン・コーポレーションは、15年に中国一の大富豪と噂される王健林氏が率いる大連ワンダグループに約780億円で買収されている。

 王氏は不動産王であったが、最近はスポーツやエンターテインメント分野の外国企業を次々に買収しており、中国でのトライアスロンの潜在市場が大きいことを見越しての投資といわれている。

 トライアスロンは競技者が自分自身を極限まで追い込み、ゴールすることで高い満足感を得ることができるスポーツといわれている。競技者自らが高い満足感を得るだけでなく、開催地域も経済的に潤い、世界にPRできれば、スポーツツーリズムとして大成功である。今後ともトライアスロンに注目していきたい。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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