
平昌冬季五輪が無事に終了し、日本勢は冬季五輪史上最多のメダルを獲得した。メダルラッシュの原動力は若手選手の大活躍だった。
フィギュアスケートでは羽生結弦(23)が金メダルを獲得するとともに、66年ぶりの2連覇を達成し、五輪初出場の宇野昌磨(20)も銀メダルを獲得。スピードスケートでは高木美帆(23)が3種目に出場して金銀銅メダルを獲得した。スノーボード・ハーフパイプでは平野歩夢(19)がソチ五輪に続いて銀メダルを獲得。羽生と宇野が金銀メダルを獲得した日には将棋の最年少プロ藤井聡太五段(15)が棋戦初優勝を飾り、六段に昇段。棋戦優勝も六段も史上最年少で中学生では初めて。
また、今年1月に開催された全日本卓球選手権大会男子シングルスで張本智和(14)が初優勝し、史上最年少優勝記録を更新。同じく女子シングルスで伊藤美誠(17)が優勝し、併せて女子ダブルス、混合ダブルスでも優勝して3冠を達成。まさに「後生畏るべし(若者には将来への可能性があり、その進歩は畏敬すべきものがある)」だ。
若手の大活躍でスケート、将棋、卓球などがマスメディアの話題になり、数多くの少年少女が後に続けとばかりに関心を高めている。翻って観光分野に目を向けると、必ずしも若者が強い関心を抱く分野にはなっていない。若者が関心を抱かない分野には将来性がないが、そういう状況で評価すべき動きがみられる。
一つは文部科学省が2014年から推進している「スーパープロフェッショナルハイスクール(SPH)」事業。これは高度な知識・技能を習得し、社会の第一線で活躍できる専門的職業人の育成を図る事業で、北海道では札幌啓北商業高校が推進校に選ばれている。啓北商高はSPHの一環として台湾への視察研修を実施し、MICE施設や観光施設を視察して、高校生がMICEや観光への関心を高める絶好の機会を創っている。
もう一つは北海道の大手宿泊企業・野口観光が今年4月に開校する「野口観光ホテルプロフェッショナル学院」だ。
これは2年制職業訓練校(1学年定員30人)で、ホテルの基礎知識とおもてなしだけでなく、ホテル経営についても教え、おもてなしのトータルクリエイターを養成する。職訓校生は野口観光グループの正社員として雇用され、毎月給料をもらい、全寮制で学ぶことになる。学院長の野口秀夫社長はホテル業の国際化への対応が図れるホテリエ(ホテル経営者・責任者)の養成を目指している。
宿泊業の人手不足が深刻化する中で、野口社長は若者たちが誇りをもってホテルプロフェッショナルとして活躍できる基盤づくりに挑戦しており、その試みは高く評価できる。観光分野における「後生畏るべし」の具現化に期待したい。
(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)