【私の視点 観光羅針盤 113】人づくり革命と「旅育」推進 石森秀三

  • 2017年8月28日

 8月3日に第3次安倍内閣(第3次改造)が発足した。今回の内閣は「仕事人内閣」がスローガンで、看板政策は「人づくり革命」である。安倍政権は内閣改造のたびに政策の看板を掛け替えてきた。いわく「地方創生」「一億総活躍」「働き方改革」と続いて、今回の改造内閣の看板が「人づくり革命」だ。

 この看板政策の担当大臣は茂木敏充経済再生相が兼任するが、看板政策の推進組織として立ち上げられたのは「人生100年時代構想会議」であるために、「若者への投資を拡大する」と言いつつ、現実には「社会保障制度の革命的大転換」が意図されているのではないかという批判が生じている。

 安倍晋三首相は記者会見などでしばしば「子どもたちの誰もが夢に向かって頑張ることのできる日本でなければなりません。人づくりこそ次なる時代を切り開く原動力であります」と述べている。その主張は間違っていないが現実にはいま日本で「子どもの貧困」が深刻化している。

 所得が平均的世帯の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の子どもの割合が約14%になっている。要するに、子どもの7人に1人が貧困な状態に置かれているわけだ。日本はGDP(国内総生産)が世界第3位、国民1人当たりの所得でも世界第23位の経済大国であるが、貧富の格差が深刻化しており、子どもに深刻な影響を与えている。

 観光との絡みで貧困問題を考える際に、すでにプロプアー・ツーリズム(貧しい人々に利益をもたらす観光)が世界的課題になっている。これまでプロプアー・ツーリズムはアフリカ諸国やその他の世界最貧国で、さまざまなプロジェクトが進められてきた。世界的に貧富の格差が進む中で、今後は日本のような世界最富裕国でもプロプアー・ツーリズムを実施すべき事態になっている。

 日本の子どもたちの貧困は、子どもたちの旅行機会の減少を意味している。子どもたちは本来、旅行を通して、未知の世界や人々と出会い、新しい知識を得ると共に、生きていくための諸々のパワーを得ることができる。

 そういう意味で、改めて「旅育」の重要性を指摘しておきたい。私は20年前から「旅育推進法」の制定を提唱している。人づくり革命に便乗して、子どもたちの貧困化への対応方策の一つとして旅育推進法を制定することによって公的に旅育を推進できる制度を整えるべきだ。併せて日本では国内旅行の低迷が深刻化しており、旅育の推進は国内旅行振興にも寄与するはずである。

 日本では農林水産省主導で2005年に「食育基本法」が施行され、食育関連の諸事業が展開されている。食育も大切だが、旅育も同様に大切なので、観光・旅行業界は「旅育推進法」制定に向けて国民的運動を主導すべきだ。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

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