日本でも待望のワクチン接種が始まり、コロナの終息に期待しつつも、2021年もまだまだウィズコロナが続くことを覚悟している。宿泊業界はコロナ禍で非常に厳しい状況が続いている。コロナ前はインバウンド特需など、客室稼働率は95%超えが当たり前、業界全体は潤っていたが、今では20%前後だ。この短期間でここまで状況が変わることは今まで経験したことがない。Go Toトラベルにより一時的に稼働や売り上げは回復したが、この施策は時限措置なのでGo Toトラベルに頼らなくても、お客さまに来ていただく仕組みを検討しないと大変なことになると考えている。
コロナ禍において、私は読書の時間を増やし、本からたくさんの気づき、ヒントをいただいた。その中で、宿泊業界に必要な「ファンベースの考え方」について紹介したい。元電通のさとなおさんたちが立ち上げた会社、ファンベースカンパニーの取り組みだが、この考え方はコロナ禍で苦しむ宿泊業界を救えると感じた。
日本市場は、人口急減(2004年1億2784万人をピークに減少し、2050年には9515万人)▽高齢者の消費意欲減退▽超成熟市場による消費意欲減退―ということが予測されている。商品がたくさんあって、どの商品も良いという超成熟市場においては、USP(独自の強み)が陳腐化する。これからはUSPだけで戦える時代ではない。つまり「機能価値」の訴求から、コピペされない「情緒価値」の訴求が必要であり、お客さまから共感、愛着、信頼される商品、サービス、ブランドでないと生き残れなくなる。
ホテル、旅館の本来の強みである「情緒価値」を訴求していないところが多く、とてももったいない状況だ。Go Toトラベル停止期間でも、宿泊してくれるお客さまは、そのホテル、旅館のファンだと思う。自分が好きなホテル、旅館を応援したいと思って、泊まりに来てくださる。ファンとの絆、関係性を深めることができれば、Go Toトラベルに頼らなくても、お客さまに来ていただけることが実現できるのではないだろうか。
弊社でも、昨年から過去にご宿泊いただいた方(既存顧客データ)の分析業務を取り組んでいる。宿泊回数、利用金額、居住エリア、リピート率など、数千から数万件のデータを分析することで、いろいろな課題や傾向を把握することができた。「パレートの法則」は、宿泊業界においても当てはまると思う。上位20%の顧客で、売り上げの80%が作られる、上位20%の顧客との関係性を強化しないと、売り上げの80%をロストすることになる。
「既存顧客データ=埋もれているお宝」を整備、分析し、誰に対してどういうアプローチをすべきか? コロナ禍で苦しい状況でも、これは未来につながる取り組みだと思っている。微力ながら、宿泊業界にファンベースの考えを広め、実行いただける施設をサポートさせていただきます。
(コレリィアンドアトラクト代表取締役)