年間訪日旅行者数が2403万9千人となり、ますます拡大を続ける中、米国は、欧米で最も大きな訪日旅行市場である。2015年には年間で初めて100万人の旅行者が日本を訪れたが、16年は前年をさらに大きく上回る対前年20・3%増の伸びを示し、年間で124万2700人の訪日を記録している。また、単月の訪日旅行者数に関しても、14年4月から33カ月連続して当該月の過去最高を記録しており、米国からの訪日旅行需要が引き続き急速に拡大していることが明らかである。
米国の経済状況が堅調に推移していることを背景に、米国からの海外旅行者数自体が拡大している。米国商務省が発表した16年1~9月の米国人海外渡航者数統計(メキシコ・カナダ除く)は、対前年同期比約7・1%増、さらにアジアへの渡航は10・1%増となっており、15年の年間を通してのアジアへの渡航者数の伸び率は6・6%であったことと比較しても、16年のアジアへの渡航者数は増加傾向にある。
有力な米系旅行会社からは、根強い海外旅行先である欧州でのテロをはじめ、世界的情勢不安への懸念、また、新たな旅行先を求める旅行者需要が相まって、アジア方面への関心が高まっているとされている。現に、16年から日本を含むアジア部門の新設、商品化を図った旅行会社も複数社あり、デスティネーションの多様化の動きが生まれている。中でも訪日旅行人気が高いとの声が各社から上がっている。
上述の統計によると、米国からの海外旅行者数は夏季休暇が最も多く、次いで春休み、クリスマス時に増加する傾向がある中で、訪日旅行需要については、夏休みがピークではありながらも春季から夏季、そして秋季と訪日客数に大きな差がなく、特に大きな連休のない秋季に訪日客数が伸びる点については海外旅行ではなく、訪日旅行自体への需要が大きく影響していると読み取れる。一方で、夏季休暇が米国人旅行者の最大の旅行時期であるならば、訪日旅行需要はさらに取り込むべきとの見方もできる。
しかしながら、米国市場は人口規模、地理的に大国であり、戦略的なアプローチが求められる。航空券の発券数(Forward Keysデータより)を分析すると、日本への直行便を4都市抱えるカリフォルニア州が30%と圧倒的シェアを占めており、ニューヨーク州が10%、ハワイ州が9%と続く。テキサス州(5%)、ワシントン州(4%)、オレゴン州(2%)を加えた西海岸+ハワイ州で半数を占めており、訪日旅行に関する情報量やその接触頻度には地理的格差があることに留意しなくてはならない。
米国市場における訪日旅行は、アジアへの関心増加の影響も受け、新規商品造成の機運が高まり、東京、箱根、京都、大阪+広島のゴールデンルートのみならず、地方都市への関心も増している好機を捉え、より綿密なターゲット分析により、訪日旅行需要をさらに創出すべく、効果的なプロモーション活動に努めていきたい。