【日本ふるさと紀行 26】播州龍野(兵庫県たつの市)~「赤とんぼ」の露風のふるさと 中尾隆之

  • 2018年6月12日

試情と郷愁を呼び覚ます播磨の小京都

 
 姫新線本竜野駅に降り立つと、プラットホームで子守姿の姉やの像に迎えられた。碑には「夕焼、小焼の赤とんぼ」の歌詞があり、駅前にも「赤とんぼ」の像が立つ。タクシーも「赤とんぼ交通」を名乗っている。

 この「赤とんぼ」の作詞の三木露風の生まれた龍野は、江戸時代に脇坂安政によってひらけた5万3千石の城下町。鶏籠山上から山麓に移した龍野城は、石垣と復元の埋門、多聞櫓、隅櫓が昔日をしのばせ、今も町のシンボルである。

 武家屋敷は城の西側、寺町は南側。東南の緩やかな坂道には白壁や格子窓の商家、町家が連なり、その先に水清い揖保川が流れる。

 小路に漂うもろみのにおいは、江戸時代から続く特産の淡口の龍野醤油。今も大小10余の工場があり、手延べ素麺(そうめん)「揖保乃糸」とともに町の経済を支えている。

 この町に露風が生まれたのは今から128年前。城の正面に立つ瓦ぶき・白漆喰壁の生家は内部を公開。

 展示には6歳の時に両親が離婚、祖父の家で育ち、16歳で詩集を出し、2年後に上京して早大や慶大で学び、のちに北原白秋とともに詩壇に「白露時代」を築いた、などとある。

 「赤とんぼ」の詩は、故郷から遠い北海道のトラピスト修道院の教師として在任中に、幼い日と母を偲(しの)んで書かれた。これに山田耕筰が曲を付けたのは昭和2年。以来、唄い継がれて、不滅の“日本の歌”になった。

 町はずれの龍野公園には露風の銅像やレンガ壁の赤とんぼ歌碑があり、マンホールやバスに赤とんぼのマークが付き、朝昼夜にメロディが流れる。白鷺山の小径を歩いていると、露風の「ふるさとの 小野の木立に 笛の音の うるむ月夜や」の歌がふと浮かんだ。

 故郷や母への思慕が色濃い露風の歌のせいか、龍野の町は初めてなのになぜか懐かしく感じられた。

 緑の山と清い川と心にしみる歌に、誰の心の底にある郷愁が呼び覚まされるのだろう。
 
(旅行作家)

●たつの市商工観光課TEL0791(64)3156

関連する記事

10月1日、本庶佑・京都大特別教授がノーベル医学・生理学賞を受賞した。多い死亡原因のがん免疫治療薬の発見とあって、喜ばしい限りである。沖縄の知事選に続いて、国政では第4次…

続きを読む

私は、日体大の武道学科の卒業生である。「武士道」を学び、己の死に場所を探す人生にしなければならないと悟った。ちょっと時代錯誤的であったかもしれぬが、教科書が宮本武蔵の「五…

続きを読む

世界最大級の水産市場である築地市場(東京都中央区)が6日、83年の歴史に幕を閉じた。11日から、豊洲市場(江東区)での営業が始まった。土壌や地下水の汚染不安は拭いきれない…

続きを読む

新聞ご購読のお申込み メルマガ申し込み

注目のコンテンツ

観光経済新聞の人材紹介

  • 旅館・ホテルの人材不足のお悩み無料相談はこちら

17年度「部門別・旅館ホテル100選」(2018年1月20日発表)

  • 「料理」「サービス」「風呂」「施設」「雰囲気」のベスト100軒

第31回「にっぽんの温泉100選・選んだ理由別ベスト100」(2018年1月1日発表)

  • 「雰囲気」「泉質」「見所・体験の充実」「郷土の食文化」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

第31回「にっぽんの温泉100選」発表!(2017年12月16日発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位別府八湯

2017年度「5つ星の宿」発表!(2017年12月16日発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」は?
Visit Us On FacebookVisit Us On TwitterVisit Us On InstagramVisit Us On Youtube

日本舞踊の山村若瑞(2016ミス日本酒奈良代表)さんが来社!