【旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 190】抜け出す経営への原理原則6 高付加価値化11 佐野洋一

  • 2023年6月22日

 (5)食事(続き)

 近年急速に多くなってきた「バイキング」スタイルにおける高付加価値化にふれておきたい。

 いきなり余談…ご存じの方も多いと思うが、「バイキング」は日本だけの呼び名で、正しくは「ビュッフェ(もしくは『ブッフェ』、英語読みでは『バフェィ』)」。またこれらは列車内などの「立食形式の食事」、あるいは「セルフ方式の食事」を表す言葉であり、厳密には「食べ放題」という意味ではない。とはいえ、ここではなじみ深い「バイキング」で話を進めていく。

 バイキングの醍醐味(だいごみ)は、たくさん並んだ料理から選ぶ楽しさにある。同じ食べるなら、より幸福感を味わえるものを選びたい…と誰もが思っている。ではいかにこの「幸福感」ウォンツに応えるか?。

 いわばこれが、魅力的なバイキングとする指針の全てである。これに照らしてみれば、乱暴な言い方だが「当たり前のことをやってもしょうがない」ということになる。以下、「当たり前」になってしまわないためのヒントをいくつか挙げてみたい。

 ●ライブ感

 その場で仕上げる料理は、作り置きの2倍以上の価値を生む。かけた原価もそれだけ生きる。調理人でなくともできる作業はある。

 ●目玉料理に上質感を

 例えばステーキのような「主役級」となるものでは、素材も、調理~提供のプロセスも「上質感」を大事にしたい。ここで中途半端なことをやると、評判のしっぺ返しは大きい。

 ●多彩なトッピング

 ソース類やナッツ類などのトッピングを多彩に用意すると、見た目にも華やかさと贅沢感が増す。料理本体ほど原価はかからず、まとめて作り置きもできる。

 ●特集

 地もの、特殊な仕入れ先、季節メニューなどは、一カ所に集めて「特集陳列」しよう。それだけで「群」としての意味が載り、印象に残りやすくなる。

 ●マシン提供の再考

 ソフトドリンクの「マシン」による提供は、「あればよい」の典型のようなもので、もはやコモディティでしかない。極端かもしれないが、例えばコーヒーを1杯ずつハンドドリップすれば、明らかな価値となる。

 ●デザート

 冷凍もののプチケーキやアイスクリームも「月並み」となりつつある。そういうものの向こうを張って、「おたまですくい取るプリン」なんていかがだろうか。

 ●気合いを入れた料理

 「名物」となるようなメニューをじっくり作っていこう。カレーなどは比較的ポピュラーで、特徴も表現しやすい。このようなメニューを少しずつでも増やしていけば、いつしか充実したバイキングとなろう。

 ●メニューPOP

 高級感を訴求する方向と、素朴さで迫る方向がある。付加価値アップにおいては、どちらもありだ。大事なのはセンス。決してここで手抜きや予算ケチりをしないこと。

 全ての料理に満遍なく気合いを込めるというわけにもいくまい。月並みではあっても出しておくべきものもあるだろう。だがバイキングで高付加価値が実現できるかどうかは、その「度合い」(範囲と深さ)にかかっている。要は可能な範囲で「こだわりポイント」をつくり、メリハリをつけることだと思う。

(リョケン代表取締役社長)

 

 
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