
「サービスの品質」として重点的に管理すべきは「プラスとマイナスの両端」である。そのうち、まずは「守り=不満をなくす」について考えている。特に忙しさが戻りつつある今、「遅い・忘れた・間違えた」で評判を落とすことのないよう気を付けたい。
防ぐためには「基本ルールの徹底」と「意識と緊張感を持つこと」だ。しかしスローガンだけではなかなかうまくいかない。ではどんなことを考えていくべきか…。ひと言で言えば、問題の発生しにくい「仕組みと条件」を整えることである。
まず問題を想定し、発見しよう。問題の起こりそうな時間帯や場面はある程度想定できる。チェックイン、夕食の始まる夕方6時ごろ、朝食の集中、チェックアウトラッシュ…。これらを限られた場所や人数で切り回すための「方法」を、あらかじめ考えておこう。これだけで予防できるトラブルも多い。
またこうした場で、リーダー的立場の人が「問題を見つけて指示を出す」ということが極めて大切だ。しばしばあるのは、こういう人が作業にどっぷり埋没して、あちこちで問題が起きているのに気づかないでいるケースである。「見る人」を1人置くことは、作業する人を3人増やすより効果的な場合もある。
人員配置に無理がないか検証しよう。スタッフの配置予定表にしっかり目を通すことだ。手薄と思われるところがあれば細かく調整し、またそこに応援を投入するバックアップ体制を敷いておこう。
ただ…今の時期、お客さまの数が急速に増す一方で、以前よりも少ない人員で回さなければならない旅館も少なからずあると思う。こういう場合、とかく無理な人員配置でなんとか回そうとしがちである。これまで売り上げがなくて困窮していたことを思えば、ここでなんとか取り返していきたい気持ちはよく分かる。
しかし、よくお考えいただきたい。無理な人員態勢が原因で、もし「クレームの嵐」のような事態を招き、評判を落としたとしたら…。目先でいくら売り上げが稼げたとしても、もっと大きな売り上げを将来失うことになる。またそんな状況では従業員も精神的に追い詰められて、離職者続出↓さらに人手不足という悪循環にも陥りかねない。だから今は、「無理のない範囲に予約をセーブ」しながら運転していくことを、あえて進言したい。
間違いやうっかり忘れを防ぐためには、メモを取ることが有効である。だがこれも「メモを取りなさい」と言うだけではなかなか徹底されない。まず「メモ用紙の携帯」を義務付けてみよう。会社で統一のメモ用紙を用意して、全スタッフに持たせるぐらいのことをしてもよいと思う。
最後に、これは意識ないし感性の領域になるが、「お客さまの立場に身を置く」ということを申し添えたい。例えばバイキング会場などでは、長い行列ができる場合もあると思うが、これを「いつものこと」↓「しょうがない」と看過していないだろうか。そうではなく、並んでいるお客さまの立場で「つらい・嫌だ」と思うことが大切だ。そう思えば、お詫びの態度や言葉も自然と出よう。「お待たせして申し訳ない」という気持ちを伝えるか、素知らぬ顔でいるか、不満の大きさには天と地ほどの違いがある。
(リョケン代表取締役社長)