【旅館経営ワンポイント講座 5】井伊直弼が伝えたかったこと 渡辺清一朗

  • 2022年1月2日

 2022年が明けた。これからの1年、国家も社会も個人も間違いなく激動する。年の始まりくらいは落ち着いた心で迎えたいものではある。

 昨年、暮れも押し詰まったころ、霞が関の官庁街を後にし江戸城の方向を眺めながら歩いていた。そんな折、ふと井伊直弼のことを思い出した。新暦と旧暦の違いはあるが誕生日が同じで、桜田門外の変の100年後に生まれた私にとって、雪の降る季節になると頭をよぎる存在だ。

 接客業での心得の一つに「出迎え三歩見送り七歩」という言葉がある。万端整えてお客さまを出迎え、それ以上の心で見送りをすることが大切なのだと解釈する。最近、中学校の道徳の授業で板書されているSNSを目にしたりもするとても大切な心構えだ。

 こんなことを思いながら、井伊直弼の著した「茶の湯一会集」をひも解くと「そもそも茶湯の交会は一期一会といひて、たとえば、幾度おなじ主客交会するとも、今日の会にふたたびかえらざる事を思えば、実に我(わが)一世一度の会なり。去るにより主人は万事に心を配り、聊(いささ)かもそまつのなきよう、深切実意を尽くし、客にもこの会にまた逢いがたきことをわきまえ、亭主の趣向、なにひとつもおろかならぬを感心し、実意をもって交わるべきなり。是を一期一会という」の一節があることに気づかされる。

 その考え方は千利休の「一期に一度の会」という言葉として山上宗二がのちに伝えたものではあるが、井伊直弼が「一期一会」「独座観念」という言葉として私たちに伝えてくれたのは事実だ。

 独座観念とは「客はいとまの時、互いにおしゃべりなどせず、主人を振り返りながら感謝の気持ちを心と形であらわす。主人も客が見えなくなるまで心から見送る。そのあと、早々と後片付けをするなどしない。心静かに、にじり上りより席に戻り、炉前に独座して、心静かに今日の一期一会を顧みて、もう一度、自分一人のために茶を喫することなどをすることがその極意だ」ということ。

 国際的な「ホスピタリティ」が出会う前から出会うまでに重きを置くこととするならば、私たちの「おもてなし」は別れた後までをも心深く思い、二度とないかもしれない次の出会いにまで思いをはせることだと信じたい。

 一昨年から続くウイルス騒動という人災、侵された人心、それに伴う経済の低迷が「そんなこともあったよね」と思い出に代わるのはいつのことになるのだろうか。

 しかし、そういう世の中ではあるが、何とかしようともがき前を見て進む人たちが増えていることも実感する。

 旅館・ホテル業界や、飲食業界を見渡しても、目の前に存在するお客さまにどうやって喜んでもらうかに心血を注ぐ人たちには、進むべき方向が見えている。

 新年に当たって、井伊直弼が私たちに伝えたかったその思いを、それぞれの立場で心行くまで味わうことは無駄ではない。

 本年もよろしくお願いいたします。読者に少しでも、たとえ1人にとってでも役に立つ内容を伝えてゆきたいと思います。

 (EHS研究所会長)

 
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