【旅館ホテルのおもてなし 12】やさしい想像力2 大谷 晃


 ●目で伝える

 日常生活でも、相手の目を見ずに話すことは嫌われます。接客では言うまでもありません。どれだけ話しかけやすい雰囲気を持っていたとしても、お客さまの目を見て行わなければ、こちらの気持ちは伝わりません。

 そこで求められるのが「アイコンタクト」です。文字通り、目でお客さまをおもてなししたいという気持ちを伝えます。ただし、それにかける時間には気をつけましょう。長すぎても短すぎてもいけません。2秒ぐらいが適当とされます。それ以下だと短すぎてこちらの印象が弱くなり、それ以上だとお客さまはじっと見つめられているような感覚を持ち、居心地が悪いと思うようになります。

 ●お名前でお呼びする

 普段の生活の中でも、自分の名前を添えて呼ばれるのは気持ちが良いものです。きちんと対応してもらえている気分になります。

 「おもてなし」においても同じです。お名前を一言添えるだけですが、お客さまからすると、「自分のことをちゃんと分かって、もてなしてくれている」という気持ちにつながります。玄関、エレベーターの中、廊下、客室、お食事提供時など、その場面はたくさんあります。

 また、そうすることによってお客さまの情報をいち早くつかむこともできます。例えば、「〇〇様、いらっしゃいませ。今日はむし暑いですね」とお声をかけた時、「そうね。汗かいちゃって」という言葉が返ってくるかもしれません。その言葉を聞いた仲居は冷房をその場で強めたり、あるいは冷たい飲み物を1杯持ってきてお客さまにお出しすることができます。するとお客さまからは「かゆいところに手の届く仲居」として、喜んでいただけるでしょう。

 お客さまのお名前を言い添えるだけですが、おもてなしの場面が広がっていきます。逆にお名前で呼ばれることを嫌うお客さまもいらっしゃいます。そこはやさしい想像力で対応しましょう。

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 ■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。

 
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