4連休となった9月のシルバーウィークは、各地でかなりの人出があったことが報じられた。夏休みの観光レジャーが不発に終わった後だけに、まずは素直に喜びたい。感染の動きがストレートに跳ね返ってくる観光業界は、文字通り一進一退の状況にある。旅行を楽しむ人それぞれが、自制心を持った行動をしてくれることを祈るばかりだ。
さて、前々回(126)は「態勢の立て直し」をテーマに、まずは「追加運転資金の調達」「発生主義で収支尻を見る」ということについて、そして今を「平常」と捉え、Withコロナで成り立つ運営・経営とする必要性についてお伝えした。
また、これを受けて前回は、収入面で最大の着目ポイントとなるGo Toトラベルを最大限利用することについて述べた。
「態勢の立て直し」におけるもう一つの課題は支出面である。中でも一番に考えなければならないものは人件費であろう。
解雇がなければ中小企業で100%、大企業で80%―国によるこれだけの手厚い補償は、世界的に見てもおそらく日本だけではなかろうか。雇調金のコロナ特例は12月末まで延長されることになっており、来春までの延長も検討されているようである。企業が持ちこたえるためには、もうしばらくの延長を期待したいが、それは国の政策次第。まずは現状の予定を前提に経営の組み立てを考えていかなくてはならない。
ところで現状、貴館における人件費率はどれくらいになっているだろうか。平常時で旅館が目安とすべき人件費率は、ごく大雑把に言えば30%程度である。このうち給与分は雇調金で補填(ほてん)されるとはいうものの、法定福利費は助成の対象ではなく、これが平常時の年商に対しても4~5%前後あると思われる。
また役員報酬も必要であろう。売り上げが平年の半分ともなれば、それだけでこうした「固定人件費」は売り上げの何割にもなるかもしれない。その上、「こういう状況だからしょうがない」と成り行きに任せていたら、人件費はすぐに売り上げの6割、7割という数字になってしまうだろう。
従業員の休業設定を細かくコントロールして、なるべく人件費の変動費化を図る必要がある。そこで二つの面からの取り組みをご提案する。
(1)営業のメリハリ
まず、旅館の計画休業を今後とも大胆に行っていくこと。例えば、1日の採算分岐点売り上げがいくらになるかを見極め、売り上げがそれに満たないと予測される日は休業とすることだ。
ブッキングカーブ(予約速度)を見ながら、中小規模の旅館なら半月単位、大規模旅館でも1カ月単位ぐらいで細かく見直しをしていくことをおすすめする。
(2)要員数圧縮と輪番休業
もう一つは、業務量を減らすことで、そもそも配置すべき要員数を少なくすることだ。感染防止対策などで、逆に増員が求められるような対応も出てきていると思うが、ここはマルチタスクでなんとか最小限に抑えたい。その上で、客数に応じた従業員の輪番休業を細かく設定する。シフト組みや計算は少し面倒だが、それくらいのことはいとわずにやろう。
こういう工夫が、必ずや今後への新しい運営ノウハウ(=基盤)となる。
(株式会社リョケン代表取締役社長)