【旅館はもっと良くなるべきだ 旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 96】モチベーション3 リョケン代表取締役社長 佐野洋一

  • 2019年6月2日

 人のモチベーションを高めるための方法について引き続き考える。

 (4)成長を実感させる

 自己が成長しているという手応えは、内なるやる気エネルギーを引き出す。逆にそれがないと毎日がマンネリとなり、仕事も生活もつまらなくなる。特に、希望に胸膨らませて入社してくる若い人は、そのような空虚感に対してセンシティブである。しかしこのことが、大半の旅館でいまだに意識されていない。

 前にも触れたが、よくあるケースとして、入社1、2年目ぐらいはとにかく仕事を覚えることに一所懸命で溌剌(はつらつ)とやっていたのが、ようやく一人前になり、いろんなことを任せられるようになった3年目ごろ、理由もよく分からないままに離職してしまうということがある。会社、職場環境、地域事情により、さまざまな背景が絡んでのことだと思うが、一つの大きな要因として考えられるのが、「このまま今の仕事を続けていくこと」への不安だ。特にこれといった不満=マイナス要因があるわけでもなく、あえて言えば、「はっきりした将来展望が持てない=積極的プラス要因が見つからない」ことが離職要因となっている。

 今回の話のテーマは離職防止策ではないが、本題も根は共通だと考える。「成長実感」というものに光を当てることが、離職予防策を考えることにもつながるのだ。

 では成長を実感させるために、私たちはどんなことをしていったらよいだろうか? 三つ考えられる。

 まず簡単なことから…成長しているという客観的評価を本人に伝えることである。よく「彼は近頃成長したなぁ」というようなことが言われる。しかしやっていただきたいのは、幹部の間でひそかに評価しているだけでなく、本人がそれを実感できるようにすること。「彼は」を「君は」に変えて直接伝えることだ。これは前回、「(3)褒める、認める、位置付ける」で述べたこととも重なるが、ここでのポイントは、その対象を「成長」に置く点にある。「1年たってこうなった」「2年の間にこれだけのことができるようになった」ことを、経営者や上司は、共に祝福してあげよう。がぜん、自信と意欲が燃え上がるはずだ。

 余談だが、入社間もない若い社員なら、これをその親や学校の先生にも伝える場を作るとよい。本人も親もハッピーになれるし、会社にとっても、就職先としての好感が育まれることになって「三方良し」である。

 二つ、成長が実感できるような職務を与えることである。展開方向は「ステップアップ」と「幅広い職務経験」。一つの職務が一人前にこなせるようになったところで、あえて別の職務を与える。それが彼、彼女にとって自然と「次のテーマ」になり、新たなやりがいとなる。当然ながら、これは能力レベルのアップや多能型人材の育成にもつながる。いつまでも同じ仕事をやらせていては決して得られない大きな果実がそこにはある。

 そして三つ、公的な資格取得の奨励と支援である。そのための学習やトレーニングは体系的な知識、技能の習得となるし、それは本人の成長を保証するものとして、間違いなく自信や誇りにつながる。

(株式会社リョケン代表取締役社長)

 
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