(28)業務を減らす(続き)
「当館のスタンダード」に見直しの目を入れる視点、今回は料理について考える。
(ⅵ)料理関連
(イ)献立本数を絞る
旅行会社との企画契約などのために、いつの間にか献立の本数が多くなり、そのまま放置されているケースがいまだに多く見られる。
かつて、旅行会社依存度の高い旅館ではやむを得なかったことだが、今は必ずしもそうではない。献立本数を減らそうと思えばできるはずだが、経営者がそのことを問題視していないケースがある。現場の状況を顧みることなく、営業面での対応が安易に優先されているのである。今の献立本数が、本当にそれだけ必要なのか見直してみよう。
献立本数が多いほど作業量は当然増え、料理の管理も複雑になる。搬送や配膳などでの間違いも起こりやすい。連泊客やアレルギーなどの対応用は別として、基本的な献立は小規模の旅館で1~2本、中・大規模で3~5本程度に絞りたい。
(ロ)料理の品数を減らす
品数の問題はかなり以前から言われている。さすがに最近では「料理が何品!」をうたい文句にすることは少なくなったが、ご飯、止め椀を除き10品前後出す旅館は多く、洋食と比べ依然として多い。
料理の品数は提供サービスの回数に直結する。1度に2品、3品まとめて出す方法もあるが、その前に、「果たしてこれだけの品数を出さなければ満足させることができないのかどうか?」を問うてみたい。
検討の方向は二つある。
一つは、複数の料理を一つにまとめること。八寸(前菜)と造りを同じ器に盛るなどが代表的な例である。料理の見ごたえを演出できるだけでなく、食事の開始直後などのサービスにゆとりを持たせることができる。
もう一つは、料理の数そのものを減らすことだ。商売の方針にもよるが、5~7品を目安に検討してみることをお薦めしたい。これまで何となく「先付、八寸、向付、煮物、造り…」と、型通りに組み立てていた献立を、よりはっきりしたストーリー性や、強調すべき料理(言わばメイン)を意識して再編成するのである。
(ハ)食事時間帯の再考
個人客の食事開始時間は、大半の旅館が到着時に希望をうかがうやり方をとっている。スタッフ人数の平準化を図るためには、その時間指定を事前予約方式にすることが考えられる。各時間枠に定員を設けて先着順で対応するのである。
また開始時間の選択肢を絞る(遅い時間帯をなくす)ことで、スタッフの拘束時間の短縮化を図る方向もある。さらに進めて、全てのお客さまを一律の時間スタートとすることも考えられる。メリットは、同じ料理を一度にまとめて調理できることだ。ただしこれは、開始直後などの集中で混乱をきたすことのないよう、料理の組み立てと併せて考える必要がある。
(株式会社リョケン代表取締役社長)