【旅に出よう~温泉はにっぽんの宝~81】“日本一まずい温泉”、その温泉街で食べ歩き 山崎まゆみ


 “日本一まずい温泉”として最近、話題の新潟県月岡温泉。少し前に、マツコ・デラックスが司会をつとめる「月曜からよふかし」に取り上げられた時、たまたま番組を観ていました。

 先日、月岡温泉を訪ねた時に、泉慶・華鳳の若女将が「多くの人が観るテレビ番組に取り上げられると、各旅館のウェブのアクセス数がぐんとあがるんですよ」と言っておられました。

 そのまずい温泉を飲んでみると、苦みとえぐみ、酸味が広がりますが、ふわっとした甘味も感じます。まずいと思う人が大多数なのかもしれませんが、私個人的には、まずいというより、一度飲んだら忘れられない味でした。

 もちろん、話題になるのなら、まずいより、おいしい方がいいに決まっている。マスメディアは面白い要素に飛びつく傾向にあり、それも尖った言葉ならより影響力があります。私が感じた「一度飲んだら忘れられない味」よりも、「日本一まずい温泉」の方が、言葉の強さはどれほどのものか。耳に残る言葉ですよね。

 まずいことには理由があります。硫黄泉がまずいことは周知の事実。月岡温泉が特筆すべきまずさなのは硫黄含有量が多いこともあります。一方で、硫黄成分は温泉に含まれる成分の中でも極めて血管拡張作用が高く、さらに皮脂や角質を洗い流す美肌の素です。入浴後はつるんと一皮むけるんです。「日本一まずい温泉」としてマスメディアに取り上げられる時に、まずい理由は美肌になるからと解説できたら、それで女性視聴者に興味を持っていただけます。

 そんな月岡温泉は2015年に開湯200年を迎え、いま若手で町づくりに力を入れています。町にはプレミアムな新潟を体験する4店舗があります。新潟の酒蔵の逸品が全てそろい、500円で3杯試飲ができる新潟地酒「蔵 KURA」。新潟米菓「田 DEN」では手焼きせんべいをつくることができ、新潟地物「旨 UMAMI」では、ご飯を片手に漬物干を味わえ、新潟飲物「香KAORI」ではワインや雪室珈琲等を試せます。ぶらぶらと回れば、2~3時間があっという間に経ちそうです。

 私が訪ねた日は、平日でしたが、20代~30代の少し頬を赤らめた女性の2人組を見かけました。女性が食べ歩きする温泉街は、きっと男性にも魅力的に映るはず。

 温泉地が、あえてネガティブな話題を提供しながらも、それを好機としている事例として紹介しました。

    (温泉エッセイスト)

 
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