【岐路 バスと観光 新たな関係67】高速バスと観光5 成定竜一


 クルマ旅行以外の分野で、お仕着せのパッケージ旅行から、旅行者自身の興味関心に基づいた「オーダーメイド型」の旅行への転換を実現するためには何が必要だろうか。大別すると、予約などの「旅行流通」と「商品(素材)」の二面があろう。

 前者については、情報収集や予約がウェブに転換したことにより進展がみられることは事実である。今日、キーワード検索すれば、公式、非公式を問わず観光地に関する情報が大量に表示される。

 また、予約が必要なサービスは、今やウェブでアクションできないものはまずない。ダイナミック・パッケージ(DP)も、複数のプレーヤーが提供している。

 消費者のIT(ウェブ)リテラシーも向上しており、高齢客など一部の層を除けば、個人旅行者が自ら「手配、予約」する環境は整ったはずである。

 それでも、周遊型の旅行に際しては旅行会社カウンターを頼る人が多いのは、旅行の「手配、予約」という行動フェーズよりも上流の過程の問題ではないか、というのが筆者の仮説である。

 「こんな旅行に行きたい」と旅のテーマや行き先をぼんやりと描く段階、および、「そういう旅行なら往復は航空機を使い、ここに宿泊すれば便利」というふうに旅程を作成する段階が、一般の旅行者にとってハードルが高いのではないか。旅行のプロにとっては何ら難しくないがゆえに、余計に、そこが課題だと気が付かなかったのではないか。

 10年といったスパンでは、AI(人工知能)のような全く新しいアプローチがこの問題を解消するのかもしれない。だが、そもそも「旅行の個人化」が求められているわけだから、機械的にモデルコースを提示する、というようなレベルでは課題は乗り越えられない。

 何らかの形で、旅行者一人一人の興味関心に寄り添い、具体的に旅程を提案し、そのまま予約につなげるようなサービスを開発する必要があると考えている。

 「手配・予約」フェーズでウェブ化が完了したわが国の旅行流通における次の課題は、その上流部分「旅行の着想、旅程作成」フェーズにおけるイノベーションなのだろう。

 (高速バスマーケティング研究所代表)

 
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