本年より旅行業法が改正され、「旅行サービス手配業」が登録制となった。対象として想定されるのは、いわゆる「総合案内所」「ランドオペレーター」、そして「(貸切バスの)代車屋」などと呼ばれる貸し切りバス手配代行業者であろう。このうち、数では、地域に特化して活動し、主に国内の旅行会社から団体(募集旅行ではなく一般団体が中心)の宿泊や貸し切りバスなど一式の手配を代行する「総合案内所」が多いはずである。
だが、今回の改正の目的は、後の2者の質の底上げであろう。
中国発、台湾発を中心としたインバウンドのツアー急減は、発地国の旅行会社から日本国内での宿泊や交通の手配を代行していたランドオペレーターの売り上げを減少させているに違いない。
また、「貸切バス手配代行業者」は、主に規制緩和(2000年)以降に参入した中小・零細の貸し切りバス事業者の営業活動を一括して請け負うものであるが、その主要なマーケットがインバウンドのツアーであったから、中小・零細の貸し切りバス事業者の稼働率低下とともに、そのような手配代行業者の取扱高も下がっていることだろう。
このたびの法改正により、手配業者らが、例えば、いわゆる「下限割れ運賃」で貸し切りバスを手配した際などに、彼らに対しても行政処分が行われることが考えられる。本来であれば、バス業界に詳しい「目利き」として、貸し切りバスの発注者(旅行会社ら)に質の高いバス事業者を選んで紹介すべき立場である彼らが、その自覚を強めることを期待する。
だが、もともと十分な資産も従業員も抱えない個人企業が多い業種であり、インバウンドのツアー急減と法改正がどのように作用するのか、予測することが難しい。
「総合案内所」をはじめとする手配業者を活用すること自体はなんら問題ない行為である。だが、国内の旅行会社をはじめとするまっとうな発注者が、そのような手配業者を介するにしても、自らが発注する先の貸し切りバス事業者の質(法令順守や安全確保状況)に注意を払い、低質な事業者は結果として市場から退出せざるを得ない環境を作ることが重要だ。
(高速バスマーケティング研究所代表)