
一定の区間や範囲の公共交通が乗降自由(乗り放題)となる「フリー乗車券」も、FIT対策の切り札のようにいわれることが多い。
だが、フリー乗車券と言っても、乗降自由となる範囲によって、導入の目的や対象(ターゲット)が異なる。
わが国では、地域内の公共交通を民間事業者(私鉄や民間バス事業者)が担うことが多い。だが、多くの国では自治体やその広域連合が公共交通を提供している。そのため、訪日外国人は、事業者をまたがるたびにあらためて運賃を支払うことに戸惑ったり、面倒に感じたりすることが多いといわれる。
特に路線バスについては、「前乗り、乗車時払い」「後乗り、降車時払い」などの乗降方式がエリアごとに異なっており、日本人客でさえ、初めての都市でバスに乗る際には不安が大きいといわれる。
従って、鉄道同士の相互乗り入れが多い東京や、市バスに加え複数の民間バス事業者が乗り入れる京都などの都市で観光するにあたっては、当該都市内で乗降自由となるフリー乗車券があればFITにとって便利だろう。
コスト(運賃)そのものより、見分けのつきづらい外国の小銭でいちいち乗車券を購入するストレスが軽減される意義が大きいだろう。また、事業者単位のフリー乗車券と異なり、事業者名を気にせず利用できる点は有効だろう。
全国のJR(主に鉄道、一部のバスなど)を乗降自由となる外国人向けのフリー乗車券「Japan Rail Pass」もFITに人気である。細長い国土の全体を観光して回ろうと思えば、新幹線に代表される鉄道は最も効率のいい交通機関だからだ。
つまり、特定の都市内といった狭域か、逆に「全国を効率よく」といった広域では、フリー乗車券は、FITの集客に有効なのだ。
だが、全国規模で、あるいは地方単位で高速バスが乗降自由になるフリー乗車券を企画しても有効だろうか。
(高速バスマーケティング研究所代表)