
つまり、発地型のパッケージツアーに代わり、「多様化した着地型コンテンツを、旅行者自身が自らの興味、関心に合わせ組み合わせて個人旅行を楽しむ」ようになるだろう、という理想図がいまだ実現していない理由は、「旅程作成の困難さ」という壁が残ったからだ、と言えるだろう。
考えてみれば、筆者自身も含め、「近いうちに旅行者自身がウェブ上で旅程作成するようになる」と言っていた人たちは、何らかの形で「旅行のプロ」であった。一般旅行者と比べよほど強く旅行に関心を持ち、知識も豊富だ。自分はこういう旅行を楽しみたい、あの人にはこういう旅行を楽しんでもらいたい、という「絵」を簡単に描ける人たちだ。
だからこそ、「多様な着地型コンテンツが提供され」「ウェブで詳細に情報を確認でき」「経路検索サービスやダイナミック・パッケージなど、旅程作成や手配(予約)を補助するサービスが拡充すれば」「多くの人が上手に使いこなしてくれるだろう」と予測した。
経路検索サービスは、確かに、「いつまでにどこに行きたい」などと移動目的がはっきりしている際には大変便利だ。一方で、「テレビ番組で見た『十勝ガーデン巡り』をしてみたい。あ、せっかく北海道に行くのだから、旭山動物園と小樽のお寿司(すし)も」という漠然とした希望を実現する旅程を組み立てるのは大変だろう。
「1泊は秘湯で、もう1泊は洋風のリゾートで」などと宿泊先にまでこだわるならば、旅程が完成するまでの試行錯誤は相当な回数になる。その過程を楽しむような人ならともかく、一般的な旅行者にとっては相当なストレスだと想像できる。
それでも、だ。余暇の過ごし方が多様化した今、旅行会社によるお仕着せではなく、旅行者自身の関心に基づいた旅行を提供できないならば、旅行という選択肢が選ばれることはなくなってしまうだろう。旅程作成のあり方をどう変革するか、に、「非クルマ旅行」の将来がかかっていると筆者は考えている。
(高速バスマーケティング研究所代表)