前回述べたように、まず重要なことは、この国全体で大変な人手不足の状態にあることを経営者が正しく認識することである。
その最も大きな要因は、人口構成のいびつさである。
現在、70歳前後を迎えているいわゆる「団塊の世代」が誕生したのは1947年から49年の間である。戦後ベビーブームと呼ばれる時期だ。この3年間の出生数は合計で800万人を超えている。また、その後の2年間もそれぞれ200万人を超えている。
彼らが定年を迎えた今でも、年齢別総人口はそれぞれ200万~220万人である。それに対し、2018年の新成人は123万人にすぎない。
生産年齢人口(本来の定義は15歳以上65歳未満を指すが、わが国における実質的な労働者の年齢層を考えると20歳前後から65歳を考えるのが妥当であろう)は、ここ数年、毎年200万人を超す退出がある一方、123万人程度しか新しい参入がないわけであり、毎年数十万人が減少しているのである。
そして、産業構成が変化しているにも関わらず、多くの企業で終身雇用が定着しており、雇用が硬直しているという問題もある。
さらに、同年齢人口が減少するのと反比例するように、大学進学率が上昇している。いわゆる「団塊ジュニア」世代が大学進学期を迎えた1992年に約26%であった大学(短期大学を含む)進学率は、急速に上昇し2009年に50%を超えている。
大学卒業者以外を採用活動の主な対象としてきた分野では、少子化による若年層自体の減少に加え、大学進学率の上昇によって、さらに大幅に対象者が減少しているのである。
一方、人口ボリュームの大きい「団塊の世代」は、定年を迎えたもののバスを含むサービス業の顧客として健在である。市場規模に比べ実質的な生産年齢人口の落ち込みの方が急激であり、その差分が、わが国で構造的な人手不足状態を生み出しているのだ。
(高速バスマーケティング研究所代表)