そのような、地方のインターチェンジ併設の高速バスターミナルや、既存の「道の駅」などの施設の一角に高速バス停留所を設置するケースが、地元の観光にどのように寄与できるか。今のところ、いい回答を見つけられていない。
むろん、地元のバス事業者の旅行業部門が企画実施する従来型(発地型)のバスツアーが、このようなバスターミナルを集合場所として活用することで、パークアンドライド駐車場を高速バスの乗客を共用する事例は見られる。しかし、地元の観光への貢献とは、大都市などからの高速バスや空港連絡バスを、2次交通や着地型商品と連携させ、入り込み客を増加させることだと考えられるが、そのような成功事例は見当たらないのだ。
例えば、国の有識者会議での議論を踏まえ、インターチェンジ併設のバスターミナルでカーシェアリングの営業を開始した、という例がある。東京などから高速バスで地方に向かい、そこで車を借りて観光を楽しんでほしいというストーリーは理解できる。
だが、この場合の高速バスは片道1時間半~4時間程度の短・中距離路線が対象。長距離の夜行路線は、体力に余裕がある若年層や、実家への帰省など「乗る前も降りた後も『自分の家』なのでリラックスできる」という利用者が中心だ。一晩、バスで移動しそのまま借りた車を運転するのは、観光旅行としてはストレスが大きすぎるからだ。
すると、その程度の距離であれば、旅行者は自宅の近くでレンタカーを借りる。特に出張ではなく観光旅行の場合、多くは家族など複数人で同一行動をとるが、高速バス運賃は人数分が必要なのに対し、レンタカー代や高速道路料金は人数が増えてもおおむね変わらず、コスト的にもその方が有利である。
また、仮に旅先では車を使うにせよ、自宅からバスターミナルまで鉄道などを乗り継いで向かうなら、手荷物などの制約が増える。
新幹線や航空は速達性が圧倒的なのでレンタカーやカーシェアとの組み合わせは旅行の効率を高めるが、高速バスの速度であれば、レンタカーなどとの親和性は大きくない。
(高速バスマーケティング研究所代表)