これまで、短・中距離の高速バス路線においては、「ウェブや電話であらかじめ予約→発券(運賃の支払い)は当日、乗車直前に」という使い方が一般的であった。発券(支払い)していなければ、たとえ乗り遅れても乗客には金銭的な負担がないからだ。20分間隔など高頻度で走る路線ほど、また使い慣れたリピーターほど、このような利用が習慣化している。
バス事業者からみれば、ノーショーとなって売り上げを毀損(きそん)するリスクがあるものの、鉄道自由席と競合する以上、なるだけ気軽に利用できる環境を確保するため、事前の発券期限を設けてこなかった。
また、バスが起点停留所を発車して以降は、途中停留所からの新規予約や変更、取り消しがあっても乗務員に伝える方法がなかったため、これまでは「電話やウェブ上での予約、変更などは、起点停留所発車の30分前」といった受付期限が設定されることが多かった。
パーク&ライド駐車場があるような途中停留所から乗車する場合は、その1~2時間も前に変更や取り消しの期限が来てしまうので、リピーターは、ウェブ上で簡単に決済できるようになっても、わざわざ事前に決済をせず、乗車時に窓口や車内で発券(支払い)をするのが一般的だった。
だが、車内にタブレット端末を搭載し、座席管理システムのサーバーと常に通信して最新の予約状況を把握する「電子座席表」が普及しつつある。これにより、「予約、変更などの受付期限」を、それぞれの停留所の発車時刻の数分前に繰り下げることができ、途中停留所からの乗客にとって、ウェブ上でクレジット決済を行うデメリットはほぼなくなる。
その結果、バス事業者が採るべき施策の幅が大きく広がる。
例えば、運賃を(鉄道との競合上、不利にならない程度に)値上げしたうえで、ウェブ上でクレジット決済を行った場合に割引運賃を設定(おおむね現行の運賃額)すれば、客単価を落とすことなくクレジット決済に誘導することができ、ノーショーを減らすことができる。もちろん、バスターミナルでの発券に関わるコストも下げることができるのだ。
(高速バスマーケティング研究所代表)