客室内を含めた館内の除菌消毒については、以前、弊社が実施した調査結果(全国男女千名、2020年4月、弊社調べ)からもそのニーズの高さをうかがい知れます。
調査の結果は、どのような施設カテゴリーであれ、「徹底した除菌消毒」および「ある程度触るところは除菌消毒」しないと宿泊したくないとの回答が約7割、さらに「できる範囲で除菌消毒」をしていないと宿泊したくないとの回答まで含めますと約9割という結果でした。
つまり今回のウイルスに対する恐怖心から、除菌消毒についてはこの短期間のうちに既に必須要件化している可能性があります。
一方でそれら取り組みについては消毒液の確保、清拭用布やその他、備品類等の直接経費、客室清掃時間への影響等の間接経費のほか、消毒液を使用することに伴うリスク等を含めて慎重な準備が求められます。
例えば細菌からウイルスまで病原体の全般に効果があるといわれる次亜塩素酸ナトリウムを希釈した次亜塩素酸ソーダについては(使用するppm濃度にもよりますが)、刺激が強いことから樹脂製手袋が必要であり、酸性の強い洗剤と混ぜてしまうと有毒ガス発生の恐れがあること、腐食作用があり、金属には不向きであること、漂白作用があること等に十分留意する必要があり、またアルコール(エタノール)については、引火しやすく電気類スイッチの小さなスパークでも危険であるほか、気化して可燃性ガスとなれば火気の近くでは使用できないこと、皮膚や目を傷める等、人体にも害があることから慎重な取り扱いが求められます。
今回の恐怖心を背景に不特定多数の高頻度接触部位に対する除菌消毒が求められている一方で、であればこそ、その実践は宿泊施設選択上、重要であるだけではなく、付加価値にもつながっている可能性があります。
そこで今回、代表的な防疫関連施策を列挙し、(1)追加で施設料金を支払ってもよいと考える人の割合(%)と(2)同回答者による追加支払い許容額平均値(円/室)を調べてみました(全国男女200名、2020年5月、弊社調べ)。
リゾートホテル等、観光宿泊施設では「客室内の換気設備」に対して(1)27%(2)約587円、「客室・バスルーム内の高頻度接触部位に対する除菌消毒」に対して(1)59%(2)約680円、「共用部における換気の徹底および高頻度接触部位に対する定期的な除菌消毒」に対して(1)45%(2)約650円、「客室内空気清浄機」に対して(1)39.5%(2)約535円、「共用部複数個所における消毒液設置」に対して(1)34.5%(2)約483円という結果でした。
シティホテルでは「客室内の換気設備」に対して(1)28%(2)約532円、「客室・バスルーム内の高頻度接触部位に対する除菌消毒」に対して(1)60%(2)約602円、「共用部における換気の徹底および高頻度接触部位に対する定期的な除菌消毒」に対して(1)46.5%(2)約587円、「客室内空気清浄機」に対して(1)39.5%(2)約463円、「共用部複数個所における消毒液設置」に対して(1)33.5%(2)約473円という結果でした。
ビジネスホテルでは「客室内の換気設備」に対して(1)27%(2)約498円、「客室・バスルーム内の高頻度接触部位に対する除菌消毒」に対して(1)62.5%(2)約595円、「共用部における換気の徹底および高頻度接触部位に対する定期的な除菌消毒」に対して(1)48.5%(2)約539円、「客室内空気清浄機」に対して(1)39%(2)約460円、「共用部複数個所における消毒液設置」に対して(1)32%(2)約489円という結果でした。
心理的な付加価値額を比較しますと、リゾートホテル等の観光宿泊施設>シティホテル>ビジネスホテルという結果でした。
市場回復時に備えて、さらにサステナブルな取り組みとする必要もあり、顧客が宿泊施設選択上、重視するということのほか、関係する人件費増やリスクも勘案した上で費用対効果を慎重に検証しておく必要があります。