最初は小規模だったお宿が年月を経て設備投資を繰り返し、規模が大きくなったという例がたくさんあります。そのようなお宿は、ハード面だけでなく、お宿を支える組織体制も大きく、複雑になってきます。
大きくなったお宿の経営者は、小規模零細事業者とは違うという認識を持つようになり、さまざまなマネジメントやマーケティング手法を取り入れようとします。
またスタッフの人数や部門も多岐にわたるので、経営者が直接見通せる範囲を超えてしまいます。
このようなお宿では、経営の実態や推移をどのように捉えていけばいいのでしょうか。ポイントは「数字に関する会議」と「仕組みと人に関する会議」をあえて分けることです。
まず初めに「数字に関する会議」を実践していきましょう。月次の予実検証会議では、全体はもちろん部門別に分かれた売上高や原価、さらに経費の勘定科目ごとに責任者を割り振ります。そして損益計算書のフォームに従って、月次計画と実績との単月および累計差異について、共通のシートをパソコンで共有しながら発表していきます。
そして差異の原因と対策について、責任者があらかじめ箇条書きでまとめた文書を説明し、出席者がコメントを加えるというパターンです。
月初め5日までに、前月の実績を踏まえた予実検証を、そして3週間目の月曜日には、中間報告として月末着地予想を実施します。
また、それぞれの部門におけるKPI(重要業績評価指標)についても、その目標数値と実績、対策等についての発表を行います。
年度の方向性と戦略、損益計画は社長と総支配人、財務責任者で作り、これを各責任者へ渡します。そこでは与えられた数字を達成するための詳細数値計画と戦術を作成し、検証会議で報告承認されたのち、実践していきます。
月次検証会議のポイントは事実に基づく数字の報告です。時折事実と憶測が入り混じった話をする人がいますが、この会議では根拠のない憶測は厳禁です。
次に「仕組みと人に関する会議」についてです。
これはお宿における組織上の部門長が集まる会議です。総支配人が推進役になります。内容は部署を超えた報告、連絡、協議事項を共有し、検討していきます。
この種の会議では、一方通行、やりっぱなしという場面が実に多く見られます。他部署のことについては無関心という背景があるのでしょう。だからこの会議では、アクションを決めるとき、同時にその後の検証の方法や進捗(しんちょく)状況の可視化の方法もパッケージで決めていくことが必須です。
多くのお宿では、月次の幹部会議で数字の検証と、それ以外の決め事や共有事項を同時に行っています。
限られた時間内で終わらせたいという事情があるため、終盤が尻切れトンボになってしまいます。
この目的が異なる二つの会議、どちらもお宿にとってはとても重要です。だから高いレベルで実施していくために、「数字に関する会議」と「仕組みと人に関する会議」をあえて分けて設営設定するのが効果的です。
お宿の規模が大きくなると、一般的に会議の種類や時間が多くなりがちです。そうすると会議をこなすのが仕事になってしまうという本末転倒な事態に陥ってしまいます。
会議終了後、どのような行動の変化があったのか。これが会議の精度を検証するポイントです。
失敗の法則その28
検討する内容が多岐にわたった会議を一度に設営している。
その結果、会議の精度が低下していく。
だから…目的の違う会議はあえて別々に設営し、行動の変化を検証する。
https://www.ryokan-clinic.com/