【地方再生・創生論 332】学校図書館の充実を 松浪健四郎


 私どもの日体大図書館は、一般人にも開放している。専門的な貴重な内外の図書があり、全国の研究者が集う。文献研究をするためには、蔵書の数と質が大切である。図書館の開放時間も遅くまでとし、利用者サービスを重視している。大学にあっては、図書館が心臓部であり、その充実が大学の評価に直結する。

 それは大学のみならず、小中高校として同様である。世の中はデジタル化が進み、活字文化の低迷が心配されているにつけ、学校図書館の存在は大きい。

 「学校図書館法」では、学校図書館を「学校教育において欠くことのできない基礎的な設備」と位置付けられている。それゆえ、図書館のない学校なんて日本では存在しないのだ。昨今、学校図書館も蔵書の収集に工夫や特色もみられ、一人でも多くの者が活用できるようにしている。私などは東西の偉人伝に興味があり、図書館は授業よりも楽しい空間であった。

 1993年、文部科学省は公立小中学校において学級規模に応じて整備すべき蔵書数の目安を示す「学校図書館図書標準」を策定した。各学校に蔵書数にばらつきがないように、標準を達成するために各自治体が取り組むようになる。

 で、政府は、図書整備費として予算を付け、図書館標準を達成させるために応援を開始した。当初は500億円の補助であったが、現在では8500億円に達する。その中には、学校司書配置の費用や新聞配備のための費用も含まれている。

 文科省の取り組みは功を奏して、おおよそ6割から7割の小中学校が図書標準を達成しつつあるが、まだまだ不十分な学校もみられる。その原因は、地方交付税交付金を学校図書購入費として措置したにもかかわらず、自治体交付金であるために社会保障の費用に回されたりするからだという。

 交付金の使用は自治体任せであるため、財政難の自治体にあっては、学校図書費に回ってこないらしい。読売新聞の調査によると、図書費のための交付金は購入に57%しか使われていないのだ。

 交付金の使用については各自治体の裁量に委ねられているとはいえ、児童・生徒の知性に関する図書購入費、私は重視して優先すべきだと考える。背に腹は代えられぬとはいえ、将来の人材養成のためのエネルギー源、各学校図書館の充実に執念を燃やすべきだ。

 図書館に足を運んでも、いつもと変わらぬ古い本ばかりでは入場者は書物に興味をもたなくなってしまう。近年、新聞購読料が高騰したため、各家庭での購読者が激減している。学校図書館に新聞を読むために訪れる者もいる。知的好奇心を満足させることのできる図書館を立派にしてほしい。校長をはじめ、教職員たちも目を光らせ、図書館のありようを考慮してほしい。

 図書館についての委員会を教職員の中に作り、知恵を出すべきである。どの家庭も蔵書の置き場に困っている。そんな本の中で、図書館に寄付できそうな子ども向けのものもあるに違いない。自治体が買えないというのなら、各家庭に寄付をお願いすればいい。本は棚に置いておくものにあらず、読まれてこそ本が生きてくる。

 デジタル化が推進され、いよいよ活字体が遠いものになりつつある。この傾向を止めるには、子どもたちに本を読ませることから始めたい。自治体の財政事情が苦しくなると、まず、学校図書費が削られてしまう。「学校図書館の充実」を選挙戦で主張する首長や議員を私は知らない。ましてや各学校に図書司書を配置させると述べる候補者もいない。この国の文化の根源である書物の扱いが、読売新聞の「学ぶ育む」を読んでいるとよく分かる。

 読書環境を充実させ、知識の幅や深さを高めるにとどまらず、感性を磨きつつ思考力を強化する。小学校時代からその習慣を身に付けさせることは、教育上、最も大切である。知的人間、文化人を育むだけではなく、社会を構成する常識ある住民づくりのためにも重要であるのは他言を待つまでもない。

 
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