【地方再生・創生論 260】挑戦する自治体 松浪健四郎

  • 2022年5月20日

松浪氏

 「交付税減額は違法」「泉佐野市、勝訴」と大きな活字が紙面に舞った。今まで考えられなかったことが起こったのだ。特別交付税(特交)を、ふるさと納税で高い収益を得た理由でか、大阪府泉佐野市は減額された。それを不服とした市は、国を相手に争うこととなった。この市は、私の故郷であり、現在も特別顧問を務めている。で、泉佐野市を応援していたが、うれしいことに勝訴した。

 この問題については既述したが、国には地方自治体を見下す悪癖がある。法の改正で、国と自治体は対等の関係にありながら、税を交付する側に立つ国は、どうしても自治体を下位組織として扱う。簡単に「省令」を出し、これに従わせる省庁は、どうしても自治体を軽い存在と決めつけてしまう。役人が書いた省令を大臣がサインして発令される。その省令に支配される自治体、個性的な独自色を出したくとも、省令なるガードが許してくれない。泉佐野市は挑戦したのである。

 ふるさと納税制度で想像を超えた多額の寄付金を泉佐野市が集めた。全国トップの497億円を集めたのだが、それに総務省が頭にきたようだ。市が知恵を絞り、さまざまな工夫をして、赤字に苦しむ市財政を立て直し、特に教育面での遅れを取り戻すべく努力していたところ、特別交付税でおきゅうを据えたのだ。その減額に泉佐野市は苦情を呈したのである。

 各自治体に政府から交付される金は、民主的で合理的で文句のつけようがないと断言できる。が、特別交付税だけは、エンピツをなめつつ官僚が加減できる特殊なもの。もちろん大幅なことができないが、毎年その額が異なる。で、与党の各派閥は、昔は自治大臣に自派の人間を送り込むのに血潮をわかしたことがあった。出身の自治体の交付税を少しでも高くして故郷の人気取りを考えた。現在は総務省の中に入ってしまったが、代議士にとっては消防予算もあった自治省は大切な役所であった。私も議員時代には自治省への陳情が多かった。

 自治体幹部は、国に嫌われては損をすると思うのか、国に対しては「いい子」を演じる。財政に余裕のない泉佐野市は必死だった。関西国際空港の開港時に一気に国際化を目指したがため、赤字を膨らませてしまった。だが、外国人観光客が増大して順調に税収を上げつつあったが、今度はコロナ禍に泣かされる。国に最も協力する自慢の自治体だったが、膨らんだ赤字を埋めるためには、「ふるさと納税」の活用が有効であった。アイデアで稼ぐことを考え、市は一丸となって努力した。

 その結果、総務省は泉佐野市がルールを守らなかったと決めつけ、4自治体を「ふるさと納税」の制度から除外した。へこたれない市は、裁判で勝利を手中にし、再び「ふるさと納税」に復帰、工夫して寄付金を集めつつある。国や中央官僚には頭が上がらないというのでは、自治体の発展は望めない。国と裁判で闘った市は有名となり、判官びいきによるのか、寄付者が増えつつあるのは有難い。

 大阪地裁は、泉佐野市の請求を正面から認めた。国の減額決定を取り消したのである。寄付を多く集めたからといって、特交の減額は地方交付税法の委任の範囲を逸脱していて、裁判所は違法と判断したのである。総務省のいじわるが、裁判所にとがめられたのだ。公権力の行使については、慎重でなければならないし、各自治体の独自性を認める器量が国や官僚に求められる。

 総務省の裁量で定める「省令」というガードに囲まれた自治体、その範囲内で自治を行わねばならない自治体、不都合があれば総務省と相談してほしい。総務省は、各自治体の暴走を怖れるあまり、「省令」を出すが、特殊性についても理解する協力姿勢をも持つ。各自治体は、金太郎あめの町づくりでなしに、独自性を発揮して魅力的な町をつくる必要がある。くじけない泉佐野市は、活動的であるばかりか、次から次へとアイデアを出し、すぐに実行する。そのスピードに国が追いつけないようだ。

 
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