【地方再生・創生論 242】学校の危機管理について 松浪健四郎

  • 2021年12月26日

松浪氏

 私どもの日体大では、自由にキャンパスや建物に入れず、守衛のチェックを受ける。コロナ禍以前から不審な者が門の前をうろつくことがあったり、全国の学校で登校下校中にさまざまな事件が起こったりもした。また、日体大には、男女のアイドル的有名アスリートが在学しているため、ファンも押し寄せる。不審者を校内に入れないのは、危機管理上の一丁目一番地、どうしても学生を守らねばならぬ。

 2000年1月、文部省(当時)は、各学校に「不審者侵入防止のため来訪者を確認するなど学校の安全点検を行うよう通知」した。1カ月前に京都市の小学校で児童(男)が校庭に侵入した若い男に刺殺された教訓で、学校を安全な場所にするため通知を出す必要があったのだ。ところが、その1年後、正確には2001年6月8日、大阪教育大付属池田小学校で乱入してきた37歳の男が大事件を起こした。

 校内に乱入した宅間守(04年死刑執行)が、包丁で児童たちを次々に襲ったのだ。地獄絵図を見るような惨状、映画のシーンのような光景が、国立の名門小学校で繰り広げられたのだ。1年生の男児1人、2年生の女児7人が死亡し、児童13人と教員2人が重軽傷を負う歴史的な、信じがたい事件であった。私たちは腰を抜かさんばかりのショックを受ける。

 翌日、文部科学委員会の審議があった。質問に立った私は、遠山敦子文科大臣に言い放った。「大臣は、すぐに池田小学校へ行き、犠牲になられた児童たちの冥福を祈り、ご家族やご両親にお詫びをすべきです。国の学校で起こった事件、責任は国にあることを認識していますか」。で、大臣は大阪へ向かわれた。そして政府は、安全管理の不備を認めて遺族に正式に謝罪した。だが、この教訓が、全国の学校で生かされているとはいいがたいのだ。

 学校の安全対策を強化するため、校門の閉鎖や防犯カメラの設置、地域ボランティアによる登下校時間帯のパトロールなどが行われるようになったが、事件は以後も起こった。

 アメリカの地方の学校は、ほとんどスクールバスを走らせている。登下校の安全を確保し、校門は厳重であった。それでも銃を持ち込む生徒の発砲で、年中行事のごとく事件が起きる。日本でも学校の合併等の理由で、スクールバスの運行が一般化しつつある。地域ボランティアも定着し、交通安全とともに不審者のチェックをしてくれている。

 だが、学校は刑務所ではなく、校門などのフェンスはそれほど高くはない。私どもの日体大にはそのフェンスすら設置していない。ゆえに、校門や周辺に防犯カメラだけでは安全とはいえず、管理、監視する人材が求められる。人件費は高額である。それでも児童、生徒、学生を守り抜き、安全な学校にするためには必要経費といわねばならない。ハード面の対策は一時的出費で済むにつけ、ソフト面は毎月の出費が必要である。喉元過ぎれば熱さを忘れるごとく、大阪教育大池田小学校の事件が20年もたつと風化しているといえる。

 日体大は教員志望者が多い。「保健体育」教諭の中高の採用は、毎年全国トップである。2年前からの教職課程に大きな変化が起こった。学校安全に関する内容が必須となったのだ。教員にも安全や危機対応の専門知識が必要だと考えるようになり、今までの事例を理解させねばならない。教員の心構えが追加されたわけだ。

 社会には、私たちの想像を許さない異質な人たちも多くいる。「心神喪失者等医療観察法」が成立した上に、「学校保健法」を「学校保健安全法」に改正した。危機管理マニュアルの作成や研修などを義務化させ、学校の安全を守る姿勢が文科省にはある。だが、教職員の多忙が理由で、校門の監視が十分になされていないと毎日新聞が報じていた。

 危機意識が薄れ、政府の指針が徹底されなくなっている現実に各自治体の教育委員会は手を打たねばならない。また、各学校で多様な避難訓練を行事化させ、男性教員比率を高めてほしい。暴漢対策も求められるからだ。

 
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