【地方再生・創生論 237】職員の「駆け込み寺」が必要だ 松浪健四郎

  • 2021年11月12日

松浪氏

 代議士時代、毎週のように駅頭や街頭で演説をした。激励してくれる有権者もいたが、「税金泥棒」「役立たず」などと野次られる。政治家には敵や他陣営があるため、怒鳴られたり、野次られるのは日常茶飯事、それくらいでくじけていたのでは政治家は務まらない。がまんする、馬耳東風よろしく聞き流すのだが、やはり精神的にはダメージとなる。

 日体大の卒業生は、小中高の教員になる者が多いが、消防士や警察官、自衛官になる者も多い。そして、国家・地方を問わず、公務員に職を求める者も多い。いずれも「税金泥棒」と野次られる仕事であろう。暴言を吐かれても耐えて、冷静な態度をとらねばならない。社会貢献をしたくて公務員になったにせよ、住民は思い通りにならないと悪質なクレームで押し寄せてくる。説明は言い訳と決めつけられて、立場の弱さを実感する。

 主権在民の国にあっては、政治家や公務員はののしられる側に立つことになる。コロナ禍が拍車を掛け、人々のストレスが公務員の担当者に向けられる。「役所仕事」と捉えられて反感を買うこともあろう。ルールにのっとって行動せねばならない公務員からすれば、住民の思いつきでの案には容易に乗れない。すると暴言が飛んでくる。公務員には人権がないかに映る。住民のクレームはストレスとなって、その発散を公務員に対してする。これでは公務員は精神的な不調を生む。公僕とはいえ、辛い仕事である。

 全日本自治団体労働組合(自治労)の調査によれば、精神的な病気で休職する公務員が増加傾向にあるという。教員も休職者が増えたり、退職する者も後を絶たない。公務員に対する住民たちの迷惑行為は度を増すばかり、自治体職員も楽な仕事ではないようだ。では、誰が自治体の役人を守ってくれるのだろうか。その対策を練っている自治体はあるのだろうか。役人は、住民のサンドバッグにされている現在、本気になって考えないと公務員を希望する若者たちがいなくなってしまう。

 自治体の職員が、住民から受けた一番多い行為は、「暴言や説教」だという。次に多いのは、「長時間のクレームや居座り」で、「複数回に及ぶクレーム」と続く。どれもストレスのたまる行為であろう。職員の仕事は、住民へのサービスであるがために、反論は好ましくない。ストレスの上にストレスがたまる。果たして、各自治体には職員をサポートする体制や防止対策があるのだろうか。

 政治家をしていると、事務所に多様な投書と電話があった。相手陣営からのものは無視できても、支持者からのものと思われるものに対しては対応すべく手を打つ必要があった。それでも迷惑行為と思われるものもあり苦慮した経験がある。金品の要求もあれば、セクハラ的なものまで多岐にわたった。SNS上やネット上での誹謗(ひぼう)中傷には心を痛めた。特に2チャンネルにでたらめな文を毎日のように投稿されたのでは、対応する手段もなく閉口するばかりだった。

 政治家は、それらの迷惑行為や悪質なクレームは覚悟の上だとしても、役所の職員たちは住民に愚弄(ぐろう)されてばかりいたのでは心がなえてしまう。どの自治体にも「市民オンブズマン」なる組織がある。行政側をチェックして、不正をあぶり出す。弱い立場にある公務員を救う、支援することはしないのか。

 サッカーや野球のスポーツでは、審判に抗議したり罵声を吐くとペナルティーが待っている。役所の職員を守るルールや組織がないのは気の毒すぎる。条例で第三機関を設置して、少なくとも職員の言い分を聴取して住民のクレームの評価を見定めてはどうか。職員の「駆け込み寺」の設置である。それだけでも悪質なクレームが減少すると思われる。

 住民サービスのために働く公務員、この人たちを支援する、救済する組織がないのは不平等であることに気づくべきである。その自治体の議員たちは、選挙という試練があるため、公平に対応しようとはしない。公務員の人権を守り抜く組織を自治体内に作るべし、だ。

 
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