【地方再生・創生論 226】ITを活用した授業の地域差是正を 松浪健四郎


松浪氏

 このコロナ禍にあっても、検温、マスク、消毒を徹底させて、義務教育の小中学校に加えて高校も対面で授業が一般化しつつある。ただ大学だけは、クラスターを怖れるあまり対面授業はオンラインと併用中。対面授業の重要性を説くまでもないが、オンラインによる遠隔授業のメリットも今回、多くの大学や学校が学んだ。働き方改革にも影響を与えた。

 政府がITやAI(人工知能)などを活用した授業に補助金を出す事業を始めている。小学校から近代的な授業を行い、イノベーションに対応できる人材を育成せねばならないと政府が考えているのだ。ところが、これらの事業に対して、都道府県の取り組みに大きな差が生じているという。自治体によって温度差があるらしいが、ITを活用した授業を児童・生徒たちに1日も早く受けさせるべきだ。

 愛知、大阪、東京などの13都府県の公立校で補助金採択が100校を超えたのに、和歌山はゼロ、長崎など33道府県では100校未満だった(読売新聞)。今日のごとくコロナ禍の感染対策上、教育現場でのデジタル化も急がねばならないばかりか、危機管理対策上も大切であろう。地域によって学校教育のやり方が異なるのは好ましくなく、早く是正せねばならないが、地域によって考え方がまちまち。

 政府が支援するのは、小中高校などの授業にITを活用しているかどうかである。「エドテック」と呼ばれ、習熟度によって最適な教材を提供してもらえる仕組み。皆が理解できるように、楽しく学習できるように工夫されていて、体育授業はもちろんのこと、全ての授業で活用することができる。理解できないと授業は面白くなくなる。エドテックは、個人の能力と実力を試験で読み取り、個人に合った内容をタブレット端末で学ぶ。これらの機器を活用することによって、落ちこぼれ防止にも役立つに違いない。

 補助金を受け取るのは、教材開発などを推進する民間の事業者である。学校と教育委員会が事業者と連携し、経産省に申請する(昨年は7月末で終了)。採択されると1校につき最大で200万円が支給され、2021年の3月末までITを用いた授業が行われたが、継続が望ましい。それでなくとも日本の学校におけるIT教育が遅れているのだ。

 公立校が積極的に経産省のこの事業に熱心に取り組んだらしいが、私立校はこの事業が来年以降も続くのか疑心暗鬼でいて、模様ながめだったようだ。経産省は、このエドテック補助金を制度化し、IT、AI教育の普及のために取り組むのか明確にしないことには、各自治体は身動きがとれない。和歌山市教育委員会は、読売新聞の取材に対し、来年度以降に同じ教材を使い続けられなくなれば、現場が混乱する恐れもある、と説明したという。

 政府はデジタル化を急いでいる。新型コロナウイルスの感染対策で教育界のデジタル化も焦眉の急の課題となっている。経産省が本気になって若年層にまでデジタル化のくさびを打ち込むべきである。教育現場でITやAIを日常のものにするためには、政府のみならず各自治体も積極的に取り組む必要がある。遠隔で何もかもできる可能性をはらみ、地方から都会へ出る機会もなくなり、地方創生に寄与する手段ともなり得る。

 比較的小さな県である山梨、鳥取、長崎では、補助金を獲得するのに熱心でなかった。和歌山と同様の考えを持っていたのかもしれぬが、過疎化が進む地方こそがIT、AI教育に熱心であるべきだ。コロナウイルスの感染格差を考慮したとしても、新時代はデジタル社会。各自治体は政府主導の取り組みを先取りするくらいの意気込みでIT、AIを取り込んでほしい。乗り遅れてはならないのだ。

 条例で個人の学習データをインターネットに接続しないと決めている自治体もあるらしいが、工夫することによって問題が生じないようにできる。また、個人を記号化させたりして、インターネットの活用を推進すべきだ。

 
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