【地方再生・創生論 210】日本の地熱発電を考える 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2021年4月22日

松浪氏

 菅義偉首相は、2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする方針を打ち出した。かなり困難な「目標」をアドバルーンのごとく打ち上げたが、パリ協定を理解し、地球の温暖化や気候変動を考慮したとき、私たち国民も首相の方針を理解し、協力せねばならない。

 とはいえ、国民個人1人の協力ではどうにもならず、まず各自治体が「何ができるか」を本気になって考え、取り組まねばならないテーマである。

 すでに静岡県浜松市の取り組みについて本欄で紹介したが、各自治体もエネルギー問題に積極的に取り組む意識を高める必要がある。エネルギー対策は、国の問題と決めつけず、各自治体も参入すべきテーマだ。

 日本の電力は、2011年の3・11東日本大震災後から大変化した。原子力発電が25%を占めていたが、6%へと転じた。石炭、天然ガス等が増加した上、水力と風力が微増、太陽光が0・3%から6%へと増加した。全く変化がなかったのは地熱発電、0・2%そのままである。

 震災後、日本では電力が自由化という欧米と同様のシステムに転じた。大企業のごとく電力の消費量の多い経済を支える産業界にあって、果たして「安定供給」がなされるかの不安が横たわる。自治体が電力界に参入してもおかしくないと、私は考えている。そんな時代なのだ。

 世界第3位の火山国で地熱発電のための資源国である日本は、その普及が風力と共に遅れている。秋田県湯沢市にある山葵沢地熱発電所は、2019年5月に運転を開始。国内最大規模の施設で、発電量は湯沢市1万8千世帯にとどまらず、約9万世帯分を賄うだけのパワーがあるのだ。化石燃料を使わず、地熱発電は他の再生可能エネルギー同様、二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないのだ。地熱を生かすべきだ。

 地熱発電のためには、地熱貯留層といわれる蒸気や熱水が貯留しているマグマだまり上まで井戸を掘らねばならない。約2千メートル、費用は3億円から5億円だ。このコストは地熱発電を難しくしているのは、うまく地熱貯留層に井戸が届くかどうか、その井戸が生産になるかどうかにかかっているからである。

 温泉地やその周辺の自治体が、民間と協力してやらねばリスクの高い開発となる。地熱発電所は全国で75カ所あるとはいえ小規模すぎるが、やり方次第では規模を拡大させることも可能である。地熱発電用タービンは、日本製が優秀とされ、アイスランドでも日本製は7割を占める。三菱パワー、東芝、富士電気の国内3社は、世界を制しており技術力は誇れるのに、国内では地熱発電が進まないのだ。

 わが国の地熱発電の適地の8割は、開発が規制されている国立公園や国定公園内だとされる。小泉進次郎環境相から国立公園等の開発規制緩和の方針が打ち出されたが、自治体や国が先頭に立って開発のための行動を起こさない限り、規制を打ち破るのは困難だ。が、一歩二歩の前進である。再生可能エネルギーのためには、国民も住民も理解をするだろうし、地熱を使用しない手はなかろうか。

 地熱発電の開発は、実は容易でなく10年以上の年月がかかる場合が一般的とされる。まず初期調査は約5年、地表調査や地下の地熱活動を調べねばならない。次に約2年をかけて探査事業を開始する。実際に掘削して地熱貯留層から吹き出す蒸気や熱水の温度や量を測定する必要がある。次に約4年かけて環境アセスメント。開発方法を検討して許可を得る。

 そして、やっと開発事業に入る。タービンや冷却塔等を備えた地熱発電所を建設する。運転開始まで約3年がかかる。その間、地域住民や温泉事業者に対して連絡をとり説明を詳細に行わねばならない。

 この10年以上かかる地熱発電所の建設は、事業者だけでは困難で私は自治体も資本投下をして参画すべきだと考えている。納税者の理解を得て、再生可能エネルギー生産に住民も巻き込み協力を得る。温室効果ガスの排出をゼロにするためには、国民を自治体がいかに巻き込むかにかかっている。

 (参考JOGMEC資料、Wedge2020年12月号)

 
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