【地域創生と観光ビジネス64】駅伝ファンも垂涎「Rakuten STAY TERRACE 箱根小涌谷」新規開業 淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子


 箱根・宮ノ下から国道1号線を神社下、さらには蛇骨橋のU字のカーブを上がって左手が、今年11月に新規開業した「Rakuten STAY TERRACE 箱根小涌谷」である。

 かつて四季倶楽部「仙泉閣」があった場所、と言えば分かりやすいだろう。箱根小涌園ユネッサンよりも手前にある好立地だ。

 敷地には往時の面影を残す巨岩が並び、由緒正しき箱根路ならではの風情を醸す。落ち着いた色調の外観は自然とうまく調和している。それもそのはず。ランドスケープデザインは、アマングループも手掛けた株式会社ディー・エムだ。

 建物内に入ると、迫力のプロジェクションマッピングが出迎えてくれた。色鮮やかに四季折々の光景が広がる。ご存じの通り楽天ステイは、チェックイン・アウトが全てオンラインだから、シームレスな感覚で利用できる。ただし全くの無人かといえば、ここ小涌谷はそうではない。有人管理がなされている。くだんの筆者も半露天風呂の天然温泉かけ流しで、うっかり長湯をしたせいで、高温注意の警報装置が作動したらしく、スタッフが駆け付けてくれてビックリした。

 今では箱根町で3施設を展開する楽天ステイ。なかでもテラスシリーズは足湯が全客室の戸外(テラス)に付帯されているのが特長で、おしゃれなBBQグリルも備え付けてある。さらには室内にはサウナまで。「こんなぜいたくありなのか!?」と、叫びたくなるイマドキのしつらえだ。

 4階建て全22室、もっとも広いスイートは約170平米で収容定員10名と、箱根では珍しいスケール感が特長だ。グループや大家族がホームパーティー気分で楽しめるタイプの客室が少ない箱根で、これはブルーオーシャンと言っても過言ではない。

 キッチンには人気の家電がセンス良く配置され、調理道具が充実している点もうれしい。冷蔵庫には、保温や加熱だけで簡単調理ができる食事セットが用意されていて、地元スーパーでの買い出しも必要ない。料理が苦手な人も、ご安心を。QRコードから調理法を読み取って、手順に従えさえすればよい。金目ダイと県産豚のうにしゃぶが最高に美味だった。

 楽天ステイは2018年創業の若い企業だが、破竹の勢いで近ごろ施設数を増やしている。

 例えば、この箱根小涌谷は、オーナーが楽天グループで、運営が楽天ステイである。運営権だけで施設数を増やしているわけではない。なかには、これら保有施設が民泊(簡易宿所)ではないかとお考えの読者もいるだろう。だが、それは誤った認識である。旅館業のなかでも、ニュータイプの滞在型宿泊施設というのが正しいところで、国内での競合他社は今のところ皆無に等しい。

 さぞ不動産に長けた人たちの集団かと思い楽天ステイに話を聞いてみると、楽天グループ内の他事業の出身者も多いという。これまでにない業態を創出できた背景には、国内事情を知り尽くした人たちのアイデアや想いが詰まっているのだと知らされた。

 テラスから望む箱根路は、新春の大学対抗箱根駅伝で“山の神”が走り抜ける天下の剣。歓声がこだまする、駅伝ファンも垂涎(すいせん)の宿なのである。

 (淑徳大学 学長特別補佐・経営学部学部長・教授 千葉千枝子) 

※観光経済新聞11月18日号掲載コラム

     

 
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