【創刊3000号特集】「専門紙の役割と今後」観光経済新聞社

  • 2019年9月11日

「専門紙の役割と今後」観光経済新聞社

 前社長の江口恒明(故人)は、創刊2000号を迎えるにあたり、「専門新聞の役割と今後」を執筆し、2000号紙面に掲載した。同業他紙からも高く評価されたが、、ここで改めて掲載することで、専門紙の何たるかを読者の皆さまに知っていただければ幸いである。(社会情勢の変化を踏まえ、若干訂正・加筆した)

 新聞というマスメディアを大別すると、国民生活全般に関係するあらゆるニュースを報道する一般紙と、産業、教育、農業、化学、観光、物流など特定分野を取材対象とし、専門的な立場からニュースを報道する専門紙の二つに分けられる。

 一般紙は一般社会に広い影響力を持つが、専門紙はその性質上、影響の範囲がある程度限定され、その社会的関心も一般紙のそれに比べて高いとはいえない。そのことは、専門紙は一般社会からの批判対象となる機会に乏しく、自戒の機会も失いがちとなる。

 現に専門紙の社会的評価は必ずしも正当な認識の上に立っているとはいえない。しかし、わが国の専門紙は戦後著しい発展を遂げて確固たる地盤を確立し、いまや新聞界の一角に一大勢力を形成している。各分野はそれぞれの専門紙の強い影響下に置かれている。

 専門新聞を代表するものに公益社団法人日本専門新聞協会(一般社団法人日本新聞協会の姉妹団体で、各分野の代表紙が一定の資格審査基準で入会する)が存在するのもそれを裏付けている。

 専門紙はそうした産業各分野の有力な支えとなって、専門的できめ細かい情報を提供し、経営の指針となる助言をしたりしている。さらには、業界の連絡や啓発に寄与している。地味ではあるが業界の良き理解者としての立場からの貢献度は高く評価されていいし、それがまた、専門紙が今日の地位を勝ち得た要因といえるものであろう。

 一般紙というのはその性格上、一つの問題で全紙面を埋めるわけにもいかず、時に舌足らずの記事を総花式に盛り込まなければならないという宿命がある。その点、専門紙は自由が利く。専門分野ならいくらでも紙面を割くことが可能だ。一般紙では物足りない業界人はそうしたメディアを望むに違いない。

 が、専門紙に関する文献、資料がほとんど見当たらないのは、専門紙というよりも、それ以下の業界紙的なものがほとんどで、経営体質が弱体で専門紙といえる企業があまりにも少ないからであろう。

 専門紙の定義を述べる前に、まず「新聞とは何か」ということになる。

 小学館の大日本百科事典の「新聞」の項によると、特定または不特定の人々に時事に関するニュースや、意見・知識・娯楽、広告などを伝達する定期刊行物の一種。通常は、新聞社という専門企業によって編集、発行される日刊、もしくは週刊形式のニュース報道を主体としたいわゆる一般紙を指す場合が多い。マスコミュニケーションのメディア(媒体)の一つ――と説明している。

 新聞の要素に欠かせない要素を挙げてみると次のようになる。

■時事性

 これは時間的に最も新しく、事実的な問題を扱うという意味である。新聞の最大の特色といっていい。時事性は迅速な報道を必要とするために、しばしば正確性と相反し、矛盾する場合があるからその調和が大切である。

■公開・大衆性

 誰でも容易に手に入れられなければならず、読まれることによって存在価値が出てくる。だから部数が多いほど価値がある。

■定期・企業性

 発行が定期的でなくてはならず、それは必ずしも日刊を意味しないが、定期性を持続しなければならない。そして私企業が建前だから、経営を維持する利益を追求しなければ継続的発行は望めない。

■公器性

 新聞は社会の公器だ。公器性は新聞だけのものではないが、「思考的商品」としての公器性は高く評価されている。それはあらゆる権力による圧力から独立して、自由にして正しい世論に寄与しようとする高い理想から生まれているといえよう。高い理想と、企業としての成功とをどのようにして調和させていくか、ここに現代の新聞の深刻な苦悩が内蔵されている。従って、特に専門の分野で発行される専門紙は、業界とともに発展するために保守性なものでなければ企業として存在し得なくなってしまう。

 取材範囲と対象読者の観点から、一般紙と専門紙に分けられる。一般紙はここで説明するまでもないが、専門紙は産業経済、文化、社会など特定の分野が取材対象で、特殊あるいは関心を持つ人々で読者が占められており、従って、取材の方向はそれぞれの業界、あるいは専門的業務に関する報道、解説、論評に向けられ、一般紙よりさらに深く問題を掘り下げていくことを使命としている。

 専門紙は一般紙の手の及ばないところを補うばかりではなく、ある意味では一般紙と全く違った分野にその役割を見いだすメディアである。その役割とは具体的に次のようなことが挙げられる。

 特定の産業を対象とし、特定の業界関係者を読者とするが、特に業界の利益増進に寄与する。つまり、専門紙は業界サイドに立ち、常に業界関係者の利益増進に寄与するのが使命だから、それがひいては日本の産業経済の進展につながることを願っている。

 この場合の業界サイドとは、良き理解者として、時に公正な批判者の立場から厳しい指摘も辞さない態度をいう。また、専門紙は業界内の意思疎通の場ともなる。そして、業界の現状維持は相対的に退歩を意味するから、紙面を通じて絶えず業界に新しい息吹を注入し、総合的な質的向上を図っていく使命を果たすために、業界の啓発を心掛けなければならない。

 専門紙は一般紙と違って、個々の業界という限定された領域にあるために、購読や広告など収入面から経営的にある程度のハンディキャップは免れない。だから、企業としては一般に小規模な経営体であるのは宿命といえるが、半面、業界との結びつきもそれだけ密接なものがある。この利点を生かして、業界の繁栄こそ専門紙の発展につながるという前提に立ち、正しい意味での一体感を盛り上げる必要があろう。

 一般紙も含めて、全ての新聞にははっきりした編集方針がなければならない。編集方針とは、その新聞の所有者(社主)ないしは経営者の抱く「公示の意思」であり、新聞の制作過程でこれに関与する全ての制作者に対し、統一された基本的な判断基準となるものだ。

 ニュース素材が選択され、原稿(取材)の価値判断が加えられて、見出しが付けられ大組される(編集)までに編集方針に基づき、それぞれの分野でチェックされるから、そこに統一的な判断根拠が必要なことはいうまでもない。

 専門紙の場合、編集綱領を明記しているところも少なくないが、抽象的・総括的なものが多く、広い範囲にわたっており、ケース・バイ・ケースで判断しているところが大勢のようである。

 編集方針はその新聞社の経営方針と密接に関連する。かつては、編集優先として割り切られていた時期もあったが、現代では企業の存続が第一義とされ、企業としての新聞が認識されて、まず利益を上げ繁栄していかなければならない――となっている。

 そのため、経営の合理化は一般紙を問わず進められていくであろう。が、新聞が社会の公器である以上、社会に示した編集方針は何ものにも代えて厳として守り抜かなければならない。なぜなら編集方針は新聞の「編集権」に基づいて定められているからである。

 言論機関の“生命”ともいうべきものは編集権である。編集権とは「新聞の編集方針を決定、施行し、報道の真実、評論の公正並びに公表方法の適性を維持するなど、新聞編集に必要な一切の管理を行う機能」ということである。

 編集権は編集方針と同様に、新聞社の社主あるいは経営者に属する。その委託を受けた編集最高責任者はその指示に基づき、常にそれを確保するために個人や団体を問わず、あらゆるものに対して編集権を守る義務がある。

 専門紙がマスメディアの一員として今後どのように発展していくか、それは専門紙自らの努力と精進によるところが大である。専門紙は業界とともにあるべきで、業界の良き理解者として、今後とも歩んでいく。

 ただ、現状に甘んじていては将来はない。新聞を取り巻く環境が激変しているからだ。いまやニュースはインターネットやスマートフォン(スマホ)で見る時代となった。紙媒体としての真価が問われている。

 「活字文化」は決して廃れないだろうが、ネット社会の中で、あえて新聞を読むメリットを一般紙、専門紙ともに示すべきであろう。

 新聞にはネットでは得られないさまざまな情報が凝縮されている。経営のヒントも詰まっている。専門紙ならではの特性に磨きをかけ、ネット社会の中で、確固たるポジションを占めていきたいものだ。

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