【体験型観光が日本を変える360】夏休み、事故防止に努めよう 藤澤安良


 各地で梅雨明け宣言の便りと同時に、真夏日や熱中症の注意喚起の報道が続いている。学校の夏休みが始まった。この暑さが続けば冷たいビールが飲みたくなる大人は多い。子供はアイスと水遊びが楽しみになる。しかし、残念ながら水難事故も増えている。

 泳げると自信がある人でも、流れのある川や海では波のないプールのように自由に泳げない。水の威力は想像以上であり、とりわけ、潮の満ち引きがある海の離岸流で海岸にたどり着けないといったケースは多々ある。夏休みの自然体験はとても貴重であるが、命を落とすようなことがあってはならない。

 自然界の知識と経験がある大人の言葉や行動、プログラムの実施ではインストラクターの言うことを守らなければならない。さらには、アウトドアインストラクターは安全対策や危機管理を徹底しなければならない。自然を軽んじている人が多い原因の一つに子供時代から野外活動や自然体験をしていないことがある。

 富士登山でも滑落や低体温によって亡くなる人も少なくない。私も10回以上富士山に団体の引率で登っているが、東京が30度で、山頂(3776メートル)付近、約4千メートルで24度低く、風が強ければさらに体感温度は下がる。つまりは、真夏に氷点下を体験することになる。体験がなければ想像できないであろう。

 ガイドブックやパンフレットに装備必須の記載があっても、信用しないのか、はたまた理解できないのか、短パン、Tシャツ姿の人をざらに見受ける。「そんな靴で登る気ですか」ということも何度も見た。ガレ場や砂利場が多く、底の薄い靴は足を痛めることになり大変である。

 今年は、外国人旅行者の軽装や弾丸登山が目立っていることから、登山口での入山料収受や時間制限などで事故防止対策とオーバーツーリズムへの対応が始まっている。命を守る意味でもいろいろな規制があってもいいと思う。

 理解している人はそれらの規制はすでに自主規制しておりハードルではない。そうして、人間が自然とどう共生していくのかを学ぶことが大切である。

 日本の子供は、学校、塾、習い事、スマホ、ゲーム、ユーチューブと自然と関わらないことがほとんどであり、夏休みこそ普段できない体験をして、ひと回りもふた回りも大きく成長してほしい。大人の責任においてそういう体験機会を創造する必要がある。

 教科の宿題や絵日記、自由研究も否定はしないが、夏休みは野外体験の課題を出してもいいはずである。事故のないこの時代に生きた証しとなる夏休みにしたい。

 今年はさらにパリ五輪・パラリンピックが始まり各種目に注目選手がたくさん出場するとあって五輪ムードが高まっている。前回の東京では残念ながらコロナ禍でもあり無観客での開催となった。有観客の今回は選手に歓声や拍手が届き励みになるだろうし、生で見ることができる観客も感激するに違いない。

 日本選手の活躍にも期待が膨らむ。時差と寝不足に悩まされるがそれを超える楽しみがあるだろう。今年は誰もが充実した夏休みにしてほしい。

 
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