【体験型観光が日本を変える311】訪日外国人観光客の受け入れ 藤澤安良


 天候不順なのか、大雨と猛暑が交互に訪れ、何とも外出がおっくうになる日が続いている。国内旅行は全国旅行支援の後押しも大きかった5月までと違って、ほぼその恩恵がなくなった6~7月の動きは鈍くなっている。そこにさらに足を鈍らせているのが昨秋から相次ぐ物価高で、家計への影響は大きい。

 それに見合う以上の賃上げはごく一部の企業に限られており、可処分所得の減少はそのまま旅行費用の減少につながっている。さらに海外旅行となれば、円安が進み年末に続く1ドル=145円前後で推移しており、海外でも物価高を感じることとなりモチベーションが下がる。

 コロナ前のような格安ツアーもコスパのいい海外パックも少なくなっている。一方で訪日外国人は秋に入国枠も撤廃され、2023年の半年が終わっている段階で年間2千万人規模となっており、コロナ前の63%にまで回復している。

 円安効果は極めて大きく、日本は食費や物価が安い国になっており、銀座の高級ブランドを爆買いする光景は、日本が安く買いたたかれているような、嫌な気分になってしまう。しかし、日本人の国内旅行の動きが鈍くなっている今、日本の観光はインバウンドが頼みの綱でもある。

 19年は3188・2万人、消費額4兆8113億円で1人当たり15.8万円であったが、25年は1人当たりの消費額を20万円とし、将来にわたって政府は6千万人を目標としている。地方が受け入れなければ達成できない数値である。

 地方でも魅力発信と体験交流プログラムなどの受け入れ態勢整備を急ぐ必要がある。また、イスラム圏の旅行消費額は日本の国家予算の3倍と推測され、日本も旅行者を受け入れるにはハラル認定の宿泊施設や食事施設が不可欠となる。

 観光産業に従事する人材不足は深刻さを増している。若者が少ない田舎は特に厳しさを増している。過日もある県の田舎の食堂に1歩足を踏み入れると正面に立て看板が目に入った。特売かキャンペーン、あるいは日替わりの告知かと思いきや、人材不足と書いてあるではないか。

 つまり人がいないのでサービスが行き届かないし、待たせるかもしれないとは、一言も書いてはいないがそんな保険をかけているように見えた。50席程度の店に料理人と給仕人の2人だけであった。それで回るようにも見えた。

 働かず、社会と関わらない引きこもりが百数十万人にも及ぶ日本は、訪日観光客での経済に続いて、労働力として外国人労働者の受け入れをさらに進めなければならない場面にきている。排除の論理が少なくないが、難民や移民の定住促進も視野に入れて日本の将来ビジョンを考えなければならない。

 旅先で24時ぐらいまで飲みたい外国人に田舎はほとんど対応できない状況である。また、地産地消の和食の提供ができない状況が進んでいる。和食が世界無形文化遺産であり、外国人に輸入食材ばかりを食べさせては、日本の旅の魅力が半減する。日本の1次産業を衰退させてはならないということだ。

 
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