【体験型観光が日本を変える292】大雪にみるマインド進化の遅れ 藤澤安良


 10日朝から降りだした雪により、中央道の大半が通行止めとなった。私は前日から南信州に入っており事なきを得たが、その日に宿泊予定の温泉宿へはスタッドレスタイヤの車で雪の坂道を滑りながらも何とかたどり着いた。

 全国旅行割でにぎわいがあるかと思えば閑散としており、女将に話を聞くと、他のお客は中央道通行止めのためすべてキャンセルとなった。つまりは、私1人で全館貸し切りだ。

 加温している大浴場に露天風呂など、原油価格の高騰からかなりの負担となっている。気の毒なくらいである。

 この時期に新潟県十日町市の宿に行ったが、4メートルくらいの積雪にも関わらず当たり前のように営業し、お客も来ている。降り積もった雪で早朝5時ごろから大型の除雪車が動いていた。

今回は中央道沿線の宿泊施設は大きな打撃を受けたことになる。自然現象であり、天候のせいだとあきらめている。

 この程度の雪で通行止めにした高速道路会社のせいだとクレームを付ける人はいないだろうが、鉄道、航空機なども運休や欠航になる。

 道路は利用者にも大いに責任がある。雪道なのにノーマルタイヤで追突したり、立ち往生している車の姿がニュースで頻繁に流れる。通行止めはなかば防御の策なのだろう。

 しかし、お客のあきらめやクレームにならないことで交通事業者は甘んじてはいけない。経済の損失は極めて大きいものがある。技術革新が進む中にあってこの種のテーマは置いてきぼりになり、予測される気象状況に対策を取らず、動かさない方向で決着しようとしている。何とかしようとする精神、何とかする行動力が足りない。人間のマインドの進化が遅れている。

 日本の企業の弱体化の現われでもある。それは観光業にも及んでいる。

 次の日は快晴で雪が解けて車が動きだした。別の温泉施設に移動したが、土曜日ともあってほぼ満館である。きめ細やかな心遣いを求める方が無理なのか課題は多い。

 言葉遣い、施設の隅々、そして料理である。カロリーベースで食料自給率38%のわが国だからこそ旅に出たら、その土地の旬のもの、新鮮なものが一番のもてなしである。

 日本の農山漁村にはおいしいものが山ほどある。その食材を求めて生産者や漁師と交渉し、値切らず高く買い、料理人の腕で付加価値を付けてお客を納得させる人材を料理人という。しかしながら、現実は朝食の焼き魚がノルウェー産のサバや、チリ産もあるがサーモンが出てくる。

 山里に来ての山菜そばの山菜は隣国産で、腕を振るうべき前菜は業務用が並び、朝食の総菜はほぼ出来合いである。刺身を切り身にして納入させている料理人まがいまでいる。

 魚もさばかず、刺身も切らず、和え物も和えず、味付けもせず、包丁はいらず、業務用食材の袋を切るはさみがあればいい。それだけ手抜きをしておきながら盛り付けの工夫もあるわけではない。それはもはや、料理人ではなく、解凍はさみ手抜き職人とでも呼ぶべきか。日本の田舎の価値は大自然と食である。

 
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