【体験型観光が日本を変える28】旅行会社から体験交流を 藤澤安良


 フランスの大統領には、EUと移民に肯定的なマクロン氏が選ばれた。韓国の大統領には、北朝鮮に対して対話を重視しようとする文氏が就任した。北朝鮮の動きが注目される中、米国と北朝鮮は、ノルウェーで会談を行ったと報じられた。その直後に北朝鮮のミサイルが30分も飛翔して高度2千キロを超えるところまで達し、米国の艦船や日本の自衛隊の護衛艦などが集結している日本海に落下した。何を意味するのか、評論家の意見も分かれる。

 韓国の経済が厳しい状況下、若者の就職がままならないと伝わっている。観光産業は平和や友好関係の上に成り立っている。北朝鮮問題もあり、韓国の世情を考えると、積極的に韓国へ行こうとは考えにくいのが一般論である。新大統領には、わが国との友好と信頼の関係を再構築し、韓流ブームの時のように、日本人が好んで渡航する環境にし、経済や失業率の改善の助けにしてほしい。

 ゴールデンウイークには、多くの日本人が海外に出かけた。一方で訪日外国人旅行者数が最高を記録し続けており、ついに、海外旅行に行く人数を上回ることになった。リピーター客も増え続けており、首都圏から関西圏までのゴールデンルート、北海道や沖縄などが人気だが、著名観光地に限らず、日本の自然や田舎にも足を伸ばしつつある。さらには「爆買い」から「体験」へと言われるように、体験交流へと旅の動向に変化がみられる。

 インバウンド客の増加で国際線の航空座席数の需給が逼迫(ひっぱく)し、薄利多売の旅行業界にとっては海外旅行の増売のネックとなっている。この上はインバウンド重視にシフトしなければならないが、残念ながらその動きが緩慢である。

 国内の体験プログラムや民家ステイなどの受け入れ側のコーディネート組織にとって、日本の大手旅行会社との取引は、教育旅行を中心に信頼が築かれており、インバウンドの取り扱いもそのまま対応できる。しかし、現在はアジアを中心に現地旅行会社からの直接のオーダーが多い。そこには問題も多く、間際や当日の変更、キャンセルが相次ぐなど、その信頼感は低い。日本の旅行会社の訪日外国人旅行部門や、現地支店からのアウトバウンドなどで、その取り扱いを増やしてほしいものである。

 国内旅行においては、法人旅行の報奨旅行や社員研修、あるいはCSRの分野が体験交流型の内容にシフトしてきている。潜在的なニーズが拡大している中、旅行会社からマーケットへの提案が進まず、停滞している。旅行会社の社員自らが体験しておらず、企画も営業もプレゼンもリアリティがなく、マーケット開拓の苦戦は当然である。

 全国ほんもの体験ネットワーク会員の21団体とその傘下のコーディネート組織を合わせた61組織の体験プログラム数は、約800種類であり、農山漁村生活体験(民家ステイ)の軒数も約6千軒に及んでいる。それらの資源、素材を活用し、新時代の体験交流に力点を置くことが旅行会社の生き残りの道である。

 
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