【体験型観光が日本を変える258】人から学ぶ旅への変革を加速 藤澤安良


 北海道・知床の観光船遭難はいまだ行方不明者が多数おられる中で、運航会社のずさんな経営が次々と明るみに出てきた。命が軽んじられては観光は成立しない。観光業者が肝に銘じるべきことである。

 他にも悲しいニュースが飛び込んできた。3年前の山梨県のキャンプ場で行方不明となっていた少女が無事に帰ってきてほしいとの願いも虚しく、遺留品や遺骨のDNA鑑定から少女本人であると同時に死亡が確認された。キャンプやアウトドアが人気の時代であり、このような不幸な出来事が2度と起こらないように、事件か事故か死因の究明が待たれる。

 新型コロナウイルスによる感染者が社会問題となってから3年間で行動制限のない初めてのゴールデンウイークが終わった。その後の感染拡大を心配したが、感染者数は大幅な増加はないものの、中々減少に向かってくれない。

 そんな中、おおむねコロナ以前に近い状況で、連休明けには新幹線の修学旅行専用列車が中学生を乗せて東京駅から関西に向けて出発した。その他、修学旅行はコロナ以前より、感染防止対策を講じながらの実施であるため、航空機や新幹線利用での遠路から、全行程バス利用で比較的近い地域へと旅行先の変化がみられる。

 同時に、新学習指導要領やSDGsプログラム等が意識され、学習手法でも探究学習が取り入れられるなど、今まで以上に内容と教育効果が求められることになる。

 ロシアのウクライナ侵攻から3カ月がたって、士気が高まらないが、悪行を繰り返すロシア軍、西側の欧米諸国の軍備援助により巻き返しを図ろうと粘るウクライナ軍、いずれにしても、死傷者は増え続けている。侵攻に正当な理由や戦争に合理性などあろうはずもない。

 わが国も、先の太平洋戦争は多くの犠牲者を出して大きな過ちで苦い経験となった。領土問題でも沖縄や千島列島が米ソに渡ることとなった。その沖縄が米国から日本に返還されてから50年の節目の年を迎えた。しかし、返還後も米軍基地は残り続けている。

 そして、北方領土は西側の経済制裁などもあり、返還交渉の話し合いすらままならない状況である。そんな社会情勢からますます平和学習が重要になってくる。

 一方で一般旅行ではバスツアーは設定数も少なく大きく停滞している。また、コロナ禍やコロナ後は、今まで通りのニーズや価値観に変化が起こる。欲張っていくつもの観光地を走り回るツアーから、観光箇所数ではなく、物量ではなく、上っ面ではなく、感動を呼び起こす旅の本質に深く入り込む内容へ。食事も出来合いの業務用総菜ではなく、冷凍輸入食材でもなく、地産地消の郷土料理が旅の醍醐味(だいごみ)となる。

 さらには、技や技術、歴史物語、体験交流などのインストラクター、ガイド、インタープリター等の人に出会い、コミュニケーションを深め、人から学ぶ旅への変革を加速させたい。同時に観光産業の収益構造と新たなビジネスモデルを構築する時代が来ている。変革で観光業界の飛躍を期待したい。 

 
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